ジョン・ハッセルの音楽は、凋落する西洋文明の断末魔と捉えていた(いる)ので、
テリー・ライリー同様、自分とは縁がない音楽家と思っていただけに、
ブルースクリーンと組んだ94年の“DRESSING FOR PLEASURE” を聴いたときは、
ひっくり返らんばかりにオドロいたものでした。
えぇ~? このゴキゲンなブレイクビーツが、ジョン・ハッセルなのぉ??
そのジョン・ハッセルが亡くなったと聞き、急に思い出して、
CD棚から何十年ぶりかで引っ張り出してきたんですけれど、
う~ん、クールだよねえ、カッコよすぎ!
ジョン・ハッセルがこんなクラブ・ミュージックを作るなんて、予想もしなかったけれど、
ジョン・ハッセルのファンにしたら、これきっと駄作扱いなんだろうなあ。
スクラッチとサンプリング音に、ひしゃげたケニー・ギャレットのサックスが絡む、
アブストラクトな1曲目の‘G-Spot’ から、トリコになりました。
一転、2曲目の‘Villa Narco’ では、
ヒップ・ホップ・ビートでアッパーに迫るダンス・トラックで、もう最高やん!
サンプリングと生演奏のバランスが絶妙で、すごく緻密に作っているんですね。
ドラムスの音色だって、生音を生かしたトラックもあれば、
スネアにゲーテッド・リヴァーヴ(「ゲート・リヴァーブ」じゃない)をかけたのもあり、
ハッセルのトランペットやピアノも、生だったり、加工していたり、
要所要所に合わせてかなり作り込んでいます。
ワン・コードで反復を繰り返す曲が多いなか、
さまざまな楽器音にヴォイスやサンプリング音が変化をつけ、
サウンドスケープを動かしていくところが、もう絶妙。
不安定なビートやブレイクの多用など、リズムを切断したり、ノリを崩すような処理は、
トリップ・ホップに通じるだけでなく、今聴き直すと、
現代のジャズに繋がるものも感じさせますよね。
というわけで、思いがけずヘヴィ・ロテになっていたりするんですけれど、
もう1枚持っていた(なんで持ってんだ?)99年の“FASCINOMA” も聴き返してみたら、
こちらはハッセルの本領発揮盤で、一度聴いてまた棚に戻してしまいました。
タンブーラやバーンスリーが絡む‘Caravan’ とか、やっぱ鼻持ちならないなー。
ブルースクリーンとのコラボでも、エリントンのエキゾ・ナンバー‘Bakiff’ を
サンプリングしていますけどね。まあ、こちらはさりげなく引用したという感じで、
そんなにハナにはつかなかったので。
アンチ・ジョン・ハッセルの人間でもイケる異色作にして、ブレイクビーツの名作です。
Jon Hassell & Bluescreen "DRESSING FOR PLEASURE" Warner Bros. 945523-2 (1994)