ジョゼフ・スペンスを知るきっかけとなったのが、
ライ・クーダーの『紫の渓谷』だったことは、前回書きましたけれど、
あのレコードのオリジナル曲を聴いてみると、
ライのヴァージョンとはぜんぜん違ったりして、ずいぶん驚かされたもんです。
ウディ・ガスリーの「自警団員」なんて、とても同じ曲とは思えなかったもんねえ。
ライがさまざまなアイディアを施して、曲をアレンジするばかりでなく、
ギター・プレイ向けにかなり曲も改変していて、その独創性にただただビックリでした。
ライ・クーダーの『紫の渓谷』と、ポール・サイモンの『ひとりごと』の2枚は、
15歳のぼくに、音楽の奥深さを教えてくれたばかりでなく、
アメリカ音楽探索の旅へと向かわせたアルバムでもありました。
ライは、アルバムでは大勢のミュージシャンとともに、
かなり作り込んだサウンドを聞かせていましたが、
ステージでは、アクースティック・ギター一本のソロ・ワークで、
抜群の腕前を披露していて、これがまた絶品だったんですよ。
当時日本でも放映されていたアメリカのテレビ番組、
「ミッドナイト・スペシャル」にライ・クーダーが出演したことがあって、
その時にテレビから録音したテープは宝物でした。
そういえば、あの番組って、今考えると贅沢なラインナップでしたよねえ。
マリア・マルダー、リトル・フィート、ランディ・ニューマンなんかが観れたんだもんなあ。
アルバムでは聞くことのできない、ライのアンプラグド・ヴァージョンをたっぷり味わえる
この時のテープが好きすぎて、のちに初めて手を出したブートレグも、
カリフォルニアのレコード・プラントとニュー・ヨークのバッファローで
74年に録音されたライヴ音源だったっけ。
“PARADISE AND LUNCH” のプロモーションとおぼしきライヴで、
リズム・セクションにコーラスも加わって、ライがエレクトリックでスライドを弾く曲も
あるんですけれど、メインはアクースティック・ギターとマンドリンの弾き語り。
ジョゼフ・スペンスを聴いていたら、
ライ・クーダーのアクースティック・ギターも聞きたくなって、
思わず棚からCDを引っ張り出してきました。
CDにはLPには収録されていなかった曲も追加されて、
バンド演奏のエレクトリック・セットの曲が増えたんだっけ。
70年のデビュー作から74年の“PARADISE AND LUNCH” まで4作の
レパートリーをまんべんなくセレクトしていて、
この時代のライをこよなく愛するぼくにとっては、最高なのでした。
Ry Cooder "IF WALLS COULD SING" Triangle PYCD082