40周年記念エディションだそうです。
そうかぁ、もう40年になるんですねえ。
ぼくも今年が勤め人になって40年ですけれど、
社会人1年生で大学時代から付き合っていた彼女と別れてしまい、
失意のBGMとなった、忘れられないアルバムです。
ラヴァーズ・ロックは、70年代中頃にロンドンから誕生したというのが、
いまでは通史となっているようなんですけれど、
日本でラヴァーズ・ロックという名を耳にしたのは、もっとずっとあとのこと。
マキシ・プリーストが登場した80年代後半あたりで、
ようやくそのジャンルが少し知られるようになったんじゃなかったっけ。
わずかながら、その名が認知されたとはいっても、
当時のレゲエ・ファンはラヴァーズ・ロックを完全に見下していて、
デニス・ボーヴェルがプロデュースしたジャネット・ケイのデビュー作も、
「アイドル・レゲエ」なんて揶揄していたくらいですから。
シュガー・マイノットがイギリスRCAから出した名作“GOOD THING GOING” だって、
当時は「甘すぎる」と評され、
ジャマイカ盤にあるような気骨に欠けるなぞと言われてたんだからねえ。
当時は、ニュー・ウェイヴやダブからレゲエを語るにせよ、
ジャマイカ現地原理主義者にせよ、
こういう歌謡性の強いレゲエを評価する土壌は、まるでありませんでした。
こういうナンパなレコードは、買うのにも人目をはばかる、とまではいかなくても、
大好きとは公言しづらい雰囲気だったんですよ。レゲエ=硬派の時代ですね。
というわけで、口を閉ざしてはいても、
隠れファンのぼくのような人は、実は結構いたんですね。
00年代に入ってからか、ラヴァーズ・ロックが再評価されるようになると、
キャロル・トンプソンの本作を、ラヴァーズ・ロックの名作と
持ち上げる評論家がぞろぞろ現れ、アンタ、当時そんなこと、
ひとことも言わなかっただろと、後ろ指を指したくなったものです。
めっちゃスウィートな歌声に、よくホップするレゲエのリズムが心地よく、
キャロルの歌声も曲によっては色香が漂う艶もみせていて、
骨抜きにされる名盤中の名盤であります。
40周年エディションには当時の12インチ・シングルで、
シュガー・マイノットとのデュエットなど5曲をボーナスで収録していて、
‘Your Love’ なんて、すごくいい曲。
リヴィングで聴いていたら、
「ずいぶん珍しいの、聴いているわね」と妻が懐かしそうな目をしました。
レコードを買った当時、失恋のBGMだった本作も、
のちに妻との新婚生活のBGMとなり、音楽の記憶は上書きされていたのです。
Carroll Thompson "HOPELESSLY IN LOVE: 40TH ANNIVERSARY EXPANDED EDITION" Trojan TJCD1041 (1981)