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深まりゆく秋に ヨルゴス・ダラーラス

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Gergos Dalaras  I KASETA TOU MELODIA 99.2.jpg

う~ん、こういう伴奏で聴きたかった!
ヨルゴス・ダラーラスがギターとバグラマーで弾き語り、
アコーディオン、ブズーキ/ギター/ウード/バグラマー、カーヌーン、
ベース、パーカッションの5人が脇を固めるというライヴ盤。

これまでダラーラスのライヴ盤というと、
ライカの帝王よろしく豪華オーケストラをバックに、
新人からヴェテランまで多士済々の歌手を集めて歌うといった趣向が多くて、
正直いって食傷していたんです。
大歌手然とした演出って、ダラーラスの音楽にも、人柄にもそぐわない気がするし、
ダラーラスの歌の魅力を引き立てるうえでも、逆効果なんじゃないかなあ。

ここ最近のダラーラスの多作ぶりには、創作意欲あふれる意欲作と、
レコード会社の商魂逞しさが見え隠れする作品がないまぜとなっている感があり、
ファンとしては、注意深く選別させていただかざるを得ませんよね。

というわけで、このライヴ盤は、遠い存在の大スター歌手などではなく、
近所の音楽酒場で歌っているような「オレのヨルゴス・ダラーラス」気分を味わえる、
ファンにはまたとないアルバムです。
ライヴ盤といっても、拍手も歓声も聞こえない無観客ライヴで、配信ライヴだったよう。
パンデミックのおかげ(?)で、それが功を奏したともいえ、
インティメイトな雰囲気のスタジオ・ライヴが楽しめます。

メロディア99.2というFMラジオのスタジオで録音されたもので、
ダラーラスのお気に入り曲とファン投票で選ばれた曲17曲が集められています。
出だしの1曲目が‘Sou Axize Mia Kalyteri Agkalia’ とは意外でした。
ゴラン・ブレゴヴィッチと97年に共作したアルバム
“THESSALONIKI - YIANNENA ME DIO PAPOUTSIA PANINA” の1曲目ですね。
アフター・ビートを強調していたオリジナルより、リズムを柔らかくほぐしていて、
絶妙な味わいです。

アポストロス・カルダラスやグリゴリス・ビシコティス、スタヴロス・クユムジスなど、
ダラーラスが好んだ作家の作品を散りばめ、
いつものさりげなく歌うダラーラス節を満喫できますよ。
歌のはしばしからにじみ出るコクといったら、もうたまりません。
ほんとに憎たらしいくらい、「うまい」歌い手ですよねえ。

ラストの、18年のヨルゴス・カザンティス曲集“EROTAS I TIPOTA” に収められた
‘S’ Agapo Ke Gi’ Afto’ まで全17曲。
深まりゆく秋に、これほどうってつけのアルバムはありません。

Gergos Dalaras "I KASETA TOU MELODIA 99.2" Minos EMI 0602435761220 (2021)

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