ニュー・オーリンズのブラス・バンドなのに、祝祭感は乏しいし、
ヒップ・ホップの生バンドなのに、ストリート感がまるでなく、
メンバー全員バークリー卒かと疑ってしまうような、端正な演奏ぶり。
どうもこういう優等生的な音楽って、胸に響いてくるものがないんだよなあ、
すごく良く出来たアルバムだということは認めるんだけどでも。
そんな第一印象で、棚にしまいっぱなしだったザ・ソウル・レベルズの19年作。
最近聴き返す機会があって、たびたび聴くうちに、初めの抵抗感がなくなり、
ようやく素直に楽しめるようになってきました。
繰り返し聴くうち、このアルバムのネライが、
さまざまな音楽家とのコラボにあったんだということもわかってきました。
聴きどころがわかってなくて、ゴメンナサイであります。
たしかハープが入った異色の曲があったよなと思いながらクレジットを見たら、
いま話題沸騰のブランディー・ヤンガーだったんですねえ。
ドロシー・アシュビー、アリス・コルトレーンの志を継ぐ女性ハーピストとして、
注目の集まるブランディーと共演していたとは、すごい先見の明だなあ。
しかもこの曲‘Rebellious Destroyer’ には、
ブランフォード・マーサリスも参加していたんですね。
異色といえば、ラストのネオソウル・ライクな‘Blush [Poetry In Motion]’ のエレピは、
ロバート・グラスパー。チルなムードを醸し出して、
スタイリッシュに仕上げたところは、実にグラスパーらしいですね。
ほかにも、ソカのトップ・バンド、ケスを迎えた‘It's Up To You’ は、
ニュー・オーリンズ流ソカに仕上げたダンスホール・トラック。
トロンボーン・ショーティをフィーチャーしたマンボの‘Sabor Latino’ ともども、
カリブ海ムードを演出していて、楽しい限りです。
地元愛に溢れたトラックでは、‘Down For My City’ で
ニュー・オーリンズの子供たちのコーラスをフィーチャーしているんだけれど、
ちょっとお行儀が良すぎて、「NHK みんなのうた」みたいかな。
それより、ビッグ・フリーディアとデニシアの二人をフィーチャーした
バウンス・トラックの‘Good Time’ がいいな。
バウンスはニュー・オーリンズが生んだヒップ・ホップ・スタイルですよね。
ニュー・オーリンズからカリブ海へと拡張したレパートリーで、
広くコンテンポラリーなサウンドを目指したこのアルバム、
当初反発を感じたのも、完成度があまりに高すぎたからで、
ヒネクレものには優等生的と受け止めてしまったんでした。すいませーん。
The Soul Rebels "POETRY IN MOTION" Artistry Music ART7052 (2019)