ザ・ソウル・レベルズのジャケ裏に載ったクレジットをチェックしていて、
ケスの名を見つけた時、一瞬、戸惑ってしまいました。
えっと…、だれだっけ? 覚えのある名ではあったんですけど、
すぐに思い出すことができませんでした。
あ、そか、ソカのケスだ。
無意識に出た自分のオヤジギャグに、思わず苦笑してしまいましたが、
そういや、ソカを聴かなくなってずいぶんになるなあ。
もう10年近く、ソカのアルバムを買ってないし、
最後に買ったソカのアルバムは、ひょっとしてケスだったかも。
そんなことを考えながら、ケスの11年作“WOTLESS” を、
棚から引っ張り出してきました。
ケス(ケス・ザ・バンド)は、ヴォーカルのキーズ、ギターのハンズ、ドラムスのジョンの
ディーフェンタラー3兄弟を中心に、05年トリニダード島で結成されたソカ・バンド。
11年に‘Wotless’ がカーニヴァルで大ヒットとなり、ソカ・モナークを受賞しています。
ぼくもそのウワサを聞きつけて、その曲が収録されたアルバムを探したんだっけ。
トリニダード盤は入手が困難で、ずいぶん手を焼いたことを思い出しました。
“WOTLESS” は彼らの4作目。
アルバム・タイトルにもなったヒット曲を、どアタマの1曲目に置いています。
ライト・タッチのこの曲が、そんなに大ヒットしたの?
と、ちょっと肩すかしをくらうんですが、このアルバムが面白くなるのは2曲目以降。
ソカにヒップ・ホップ・ビートを接続して、ボトムを豊かにした2曲目の‘Ah Ting’ は、
これぞ新時代のソカといったゴキゲンなダンス・トラック。
続いてレゲトンを取り入れたトラックあり、エレクトロ・ソカありと、
すっかり世代交代したプロダクションで、ソカを楽しませてくれます。
デヴィッド・ラダーで止まってしまっているワールド・ミュージック親父たちは、
おそらくケスを知らないでしょうが、今回調べてぼくもビックリさせられたのは、
本作を出した11年の11月にケスは来日し、ツアーをしていたという事実。
しかもその時のライヴ・ツアーがDVDにまとめられていて、
DVD売上代金を東日本大震災津波遺児支援をしている
「あしなが育英会」へ寄付されていたというのだから、ビックリです。
正直ぼくも11年にこのCDを聴いて、ひさしぶりのソカの快作と思ったものの、
愛聴するまでには至りませんでした。
当時、3.11ショックをまだ大きく引きずっていた心理状況で、
エネルギーが充満したソカはまぶしすぎて、
徹底的に明るい陽性のダンスホール・サウンドを楽しむような
気持ちの余裕は、まだなかったんでしょうね。
おそらく当時ライヴ情報を聞きつけたとしても、
たぶん会場に足は運べなかったような気がします。
いまでもケスの人気が衰えることはなく、ソカ・シーンの最前線にいるといいます。
かの地のカーニヴァルも中止になるなど、COVID禍が収束していませんが、
いまこそそのライヴで、ダンスをしてみたいですね。
Kes "WOTLESS" no label KTB:04:01:11 (2011)