冒頭、いきなりバウンシーなトーキング・ドラムが飛び出てきて、のけぞり。
ヨルバ臭たっぷりのメロディに、ゆったりとスウィングするリズム、
きらきらとしたハイ・トーンのギターに導かれて歌われるのは、
なんと、ジュジュじゃあーりませんか。
え、えぇ~ !? これ、ヒップホップのアルバムじゃなかったの?
続いて2曲目は、アフロビートとヒップホップをミックスしたトラックで、うひゃー。
グルーヴィなバックトラック、早口ヴォーカルで歌うキャッチーなメロディに、昇天。
この2曲で、もう完全脱帽しちゃいました。
こんな痛快なアフロ・ポップ、何年も聴いていなかった気がしますねえ。
ヒップホップR&Bあり、レゲエあり、レゲトンありの、ガーリー・ポップ。
どの曲も表情が明るくって、前向きというか、健康的。う~ん、元気でるなあ。
ヒップホップ世代らしいカラフルなレパートリー揃いで、いやぁ、実によく出来てる。
ミュート・トランペットやスークースふうギター、
トーキング・ドラムを冒頭の曲以外でもカクシ味にチラッと使ったり、小技も利きまくり。
EDM要素のないヌケのよいトラック・メイキングは、好みだわー。
キュートな魅力を浮き上がらせたソングライティングも鮮やかで、捨て曲なし。
徹頭徹尾プロらしいお仕事ぶりに、感服させられました。
プロデュースは、ナイジェリアのヒップホップ・シーンでひっぱりだこという、ドン・ジャジー。
ドン・ジャジー自身もシンガーとして、
2曲目のアフロビート/ヒップホップ・トラックにゲスト参加してます。
その他、オラミデ、2フェイスといった人気ラッパーも多数参加。
ガーリーな魅力が溢れているとはいえ、このティワ・サヴェイジという女性シンガー、
80年生まれで、はや30半ばの人妻であります。
2作目にあたる本作制作中に、なんと出産もしてるんですね。
経歴を読んで、びっくりしました。
10歳の時、家族の仕事の関係でロンドンへ引っ越し、
ケント大学を卒業し、スコットランドのロイヤル・バンクに就職したものの、
音楽の夢を捨てきれず、アメリカへ渡ってバークリー音楽大学へ再入学。
それもそのはず、彼女はわずか16歳でジョージ・マイケルのバック・コーラスを務め、
メアリー・J・ブライジやチャカ・カーンなどのバック・コーラスを経験したばかりでなく、
スティングやデスティニーズ・チャイルドのステージに立ったこともあるラッキー・ガール。
バークリー卒業後、27歳でソニー/ATVミュージック・パブリッシングと契約して、作曲家デビュー。
ベイビーフェイス、キャット・デルーナ、モニカなどに、曲を提供し始めたそうです。
10年にはファンテイジア・バリーノへ提供した曲がグラミーにノミネイトされ、
作曲家として脚光を浴びるほか、ホイットニー・ヒューストンの09年作“I LOOK TO YOU” に
バック・コーラスとして参加するなど、シンガーとしての活動も始めます。
11年には、本国ナイジェリアで仕事をするようになり、
女優として映画デビューするほか、
初のアフリカのアーティストとしてペプシと専属契約を結びました。
13年に自己のレーベル、323エンターテインメントを立ち上げ、
マネージャーのトゥンジ・バログンと結婚、プロデューサー業のかたわら、
シンガーとしての活動を本格化し、13年に満を持してソロ・デビューしたんだそうです。
ソロ・デビュー作のヴィデオ・クリップ“Eminado” も痛快でしたけれど、
2作目となる本作は、ミュージック・ビジネスに長く関わってきた底力が示された
あっぱれなポップ作といえます。
やはり、これだけしっかりとした作品を作るには、
それ相応のバックグラウンドが必要だということを、痛感させられますね。
Tiwa Savage "R.E.D." Mavin no number (2015)