メストリ・ゼー・ド・ピフィは、
ブラジル北東部の笛ピファノ(またの名を、ピフィ)の達人。
45歳のときにブラジリアに移り住み、
ブラジリア大学に招かれてワークショップや授業で演奏をしていると、
北東部音楽に魅せられた女子学生たちがグループを結成し、
07年にアス・ジュベリーナスの名で、
メストリ・ゼー・ド・ピフィと活動を始めたのでした。
結成当初は11人いたそうですが、現在のメンバーは7人。
本作は、結成10周年を記念して制作された第2作です。
音楽監督を務めるダニエル・ピタンガが、アレンジや曲の提供ほか、
7弦ギター、バンドリン、カイピーラ・ギター、
ベース、アゴゴ他各種打楽器も演奏していて、
この人のディレクションが冴えわたっています。
多彩な曲調に、カラフルなアレンジを施していて、飽きさせることがありません。
土埃が舞うようなザブンバのビートに導かれてピファノが空を舞い、
ラベッカがぎこぎことノイジーな音を撒き散らし、
女声のハーモニーが、本来ユニゾンしかない野趣なノルデスチの響きに、
現代的なサウンドを付加しています。
メストリ・ゼー・ド・ピフィの愛弟子で、アス・ジュベリーナスのリーダーを務める
キカ・ブランダンが、達者なピフィのインプロヴィゼーションを聞かせるなど、
マラカトゥやココなど、ノルデスチの民俗色を存分に発揮しています。
ダニエル自身が歌った自作曲の‘Casa de Pedra’ はMPBの趣で、
フォークロアなトラックのなかで、いいチェンジ・オヴ・ペースになっています。
タイトル曲では、ゼーとともに子供の頃から一緒にピフィを演奏してきた、
兄のゼカ・ド・ピフィがゲストに招かれてナレーションを務めています。
二人は子供の頃、ジャガイモの茎からピフィを作ったというエピソードから、
「ジャガイモの茎」という曲名が付けられたのですね。
ライナーの最後には、中央でがっちりと握手するゼカとゼーの両サイドに、
メンバー7人が並び、西日を浴びる美しい9人の写真が飾られています。
ノルデスチ音楽の女性グループといえば、
マラカトゥのコマドリ・フロジーニャ以来のことで、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-04-25
ピファノ女性楽団を聴くのは、ぼくはジュヴェリーナスが初めて。
本作は女性ピファノ奏者メストレ・ザベ・ダ・ロカ(1924-2017)に
捧げられていますけれど、ザベ・ダ・ロカを受け継ぐ女性たちが
しっかりといることを知って、頼もしい限りです。
Mestre Zé Do Pife e As Juvelinas "TALO DE JERIMUM" no label no number (2018)