ビートメイカーでプロデューサーのNK-OK(ナマリ・クワテン)と、
マルチ・プレイヤーのMr DM(デヴィッド・ムラクボル)のデュオ、
ブルー・ラブ・ビーツのブルー・ノートからの新作。
二人のキャリアから、UKジャズとして取り沙汰されてますけど、
ブルー・ラブ・ビーツのサウンドは、フュージョンそのもの。
RC&ザ・グリッツのジャズ・ファンクに通じる、
ローファイなヒップ・ホップ・センスは、もろ当方の好みなのであります。
もはやドラムスが生演奏なのかプログラミングなのかも、
聴いているだけでは、まったく聞き分けができませんね。
プログラムのヴァージョン・アップや、プログラミング・スキルの向上ばかりでなく、
生演奏側も、マシン・ビートを正確にトレースする腕を磨きあげてきたので、
その境目を判別するのは、もう無理というものでしょう。
それにしても、なんて心地よいサウンドなんでしょうか。
‘Gotta Go Fast’‘A Vibe’ のギター・サウンドなんて、
まるでポール・ジャクソン・ジュニアを聴いているかのよう。
ベースがハーモニクスのループ・フレーズのうえで、ベース・ソロをプレイする
‘Inhale & Exhale’なんて、ジャコ・パストリアスからマーカス・ミラーに至る
テクニックを習得してきた証しで、Mr DMはフュージョンの申し子ですね。
さらにアルバム中盤では、2曲連続でアフロビーツが登場。
バーナ・ボーイならぬゲットー・ボーイというヴォーカリストが
フィーチャーされてるんですけど、ピジンくさい英語使いの主は、誰?
調べたら、ロンドン生まれのガーナ/カメルーン・ダブルのシンガー/ラッパーだそう。
アクラとハックニーを行き来してるそうで、ラップはアカン語のよう。
とにかく、この2曲、めちゃくちゃカッコいいんだわ。
さらに、さらに。アフロビーツに続くのは、
フェラ・クティの‘Everything Scatter’ をサンプリングしたローファイ・ヒップ・ホップ。
フェラのヴォーカルを切り刻んで、こんなにオシャレなトラックにしてしまっていいのか、
いや、いいのだ!とバカボンのパパ状態で、狂喜乱舞しております。
キーファーをフィーチャーした‘Dat It’ は、
ブルー・ラブ・ビーツの音楽性とバツグンの相性を示しています。
ほかにも、女性シンガーをフィーチャーしたネオソウルあり、
グライムを通過したクラブ・サウンドありで、
ロンドン新世代のクロスオーヴァー・センスが、
エレクトロ・フュージョンのサウンドに結実した傑作です。
Blue Lab Beats "MOTHERLAND JOURNEY" Blue Adventure/Blue Note 0602438891528 (2022)