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エレクトロ・イサーン・ソウル ラスミー

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Rasmee  THONG LOR COWBOY.jpg

うわぁ、こりゃあ面白い才能が出てきましたね。
タイ東北部イサーン出身のシンガー・ソングライターという、
ラスミー(・ウェイラナ)の新作。

「タイのオルタナティヴ」という紹介をされている人のようですけれど、
本作を聴くかぎり、新世代ジャズ・ヴォーカリストの文脈で紹介した方が、
より注目が集まるんじゃないのかしらん。
いや、じっさいのところ、この人にジャズの資質はないんだけど、
フーン・タン(ヴェトナム)、エリーナ・ドゥニ(アルバニア)、
ジェン・シュー(台湾/アメリカ)といった人たちと並べても、
まったく違和感ないサウンドに仕上がっているんですよ。

ラスミーの過去作を聴いたことがないので、あくまで本作を聴いた者の感想ですけれど、
ケーンやピンといった伝統モーラムの楽器が、
エレクトロな音感と見事に調和しているのに驚かされます。
エレクトロ・モーラムといった趣の‘Chomsuan’ ばかりでなく、
イサーン方言のタイ語と英語の両方で歌われる‘I Wanna Love You’ では、
イサーンのこぶし回しが西洋ポップスのサウンドの中に溶けていく
絶妙なブレンド具合にウナらされます。

このサウンドを生み出しているのは、プロデューサーのサーシャ・マサコフスキー。
ニュー・オーリンズ出身の新世代ジャズ・ヴォーカリストのサーシャは、
このアルバムで、シンセサイザーとプログラミングを担当していて、
ニュー・オーリンズから、ローズとウーリッツァを弾く
アンドリュー・マクゴーワンも呼び寄せられています。
ほかに、サーシャの父でジャズ・ギタリストのスティーヴ・マサコフスキーと、
弟のベーシスト、マーティン・マサコフスキーも演奏に参加しています。
サーシャがこんなプロデュースの才のある人とは、知りませんでした。

ラスミーの父親はモーラム楽団の座長だったらしく、
ラスミーも幼い頃から歌ってきたというのだから、イサーン独特の歌い回しは真正です。
ラスミーが書くメロディにも、イサーンの臭みがたっぷり溢れていて、
モーラムで聞き慣れたフレージングが、そこかしこに顔を出します。

ラスミーとサーシャ・マサコフスキーがどのようにして出会ったのか知りませんが、
フーン・タンとグエン・レが出会った“DRAGON FLY” に匹敵する、
ハイブリッドなポップ作品であることは、間違いありません。
なにより、アルバム全体を通じてクールなサウンドのテクスチャが、
“DRAGON FLY” とクリソツ。アジア歌謡の新たなる名盤誕生です。

Rasmee "THONG LOR COWBOY" no label no number (2021)

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