ダンソーンにヨワいんだなあ、じぶん。
8年前、ピケーテ・ティピコ・クバーノにボロ泣きして、
インスト演奏でこんなに泣けるものかと、自分でも驚いたんですけど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-11-27
ダンソーンを聴くと、こみあげるものが抑えられなくなるみたいです。
そんなことをまた思い出させられたのが、オルケスタ・ファイルデなる、
ダンソーンの創始者ミゲル・ファイルデの名前を冠したオルケスタ。
ミゲール・ファイルデ(1852-1921)の血を引くフルート奏者、
エティエル・ファイルデが12年に立ち上げたオルケスタだというのだから、
こりゃホンマモンです。
一世紀の時を超えて蘇るダンソーン。
ミゲル・ファイルデがダンソーンを生み出した
当時の標準編成のオルケスタ・ティピカより少し時代が下った、
ピアノを導入してフルートとヴァイオリン2台を中心とした、
チャランガ・フランセーサの編成で演奏しているんですね。
チャランガ時代と違うのは、クラリネット、トランペット、トロンボーンのほか、
ティンパレスがいるところで、そこが19世紀末のダンソーンを思わせるところ。
いにしえの編成で演奏される曲は、もちろんミゲール・ファイルデの曲。
さらに1曲、ミゲール・ファイルデ楽団のオフィクレイド奏者
アニセート・ディアス(1887-1964)が作曲したダンソネッテ(歌入りのダンソーン)を
取り上げ、オマーラ・ポルトゥオンドが歌っています。
アニセート・ディアスは、ミゲール・ファイルデ楽団を退団後、
14年に自身の楽団を結成して、19年から歌入りのダンソーンを試み始めた人で、
オマーラが歌う‘Rompiendo La Rutina’ は、29年6月8日にマタンサスで発表した
ダンソネッテの第1号曲。この曲が大流行して、
30年代にダンソネッテが大ブームを巻き起こした記念碑的な曲です。
エレガントなメロディを、フランスからハイチを経由して入ってきたハーモニーが
豊かに彩り、ゆったりとした慎しまやかなリズムが優雅なダンスに誘うダンソーン。
ダンソーン神話時代のマタンサスを想わせる、またとないアルバムです。
収録時間21分49秒という短さが惜しく、もっともっと聴きたくなって、
またアタマからリピートしてしまいます。
Orquesta Falide "JOYAS INÉDITAS" Egrem CD1780 (2021)