なんて清涼な音楽なんでしょう。
タンポポの綿毛が、風にのって舞うような軽やかな女声と
その女声をやさしく包み込む男声が生み出すハーモニー。
その清らかな美しさに、思わず息を呑みました。
こんな洗練されたポップスが、キューバから出てくるんですねえ。
ダジャミ・ペレス・サンチェスとハビエル・ロペス・エリアスの男女デュオ、
ドゥオ・イリスのデビュー作。
ペパーミントのハーモニーと呼びたくなる男女デュオです。
ダジャミの歌声に惚れてしまったのは、全世界的な傾向になっている、
媚を含んだアイドル声的ニュアンスが、彼女の声にはまったくないからです。
二人のつつましい歌声を、ゆったりとしたテンポで、
ギター、ピアノ、チェロなどのアクーステッックな音感を基調とした
デリケイトな伴奏が、美しくバックアップします。
わずかに登場するエレクトリック・ギターのトーンもクリーンで、
ミントの香りを運んでくるかのよう。
オーケストレーションを置き換えたようなプログラミングも鮮やかで、
オーガニックなサウンドに彩を与えています。
いやぁ、なんの知識もなくこの音楽を聴いて、キューバとわかる人がいるかしら。
それほど、キューバ、いや、ラテンからも遠い音楽に聞こえます。
‘Solo Ves’ のカントリー調のリズムなんて、
これをキューバ人がやっているなんて、信じられないほど。
聴く者を夢見心地にさせてくれる、オアシスのような音楽です。
Dúo Iris "MI SUERTE" Egrem CD1790 (2021)