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歌謡ロッカーのミャンマータンズィン ミャンマーピー・テインタン

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Myanmar Pyi Thein Tan  YADANARPON.jpg   Myanmar Pyi Thein Tan  SHWE THONE DARI.jpg

ミャンマーの伝統ポップスのかつての盛り上がりも、今はどうなってるのか、
去年2月のクーデターによって情報は完全に遮断されてしまい、
まったくわからなくなってしまいました。
新作の入手はおろか、旧作含めCDの入荷が途絶されて、
すでに1年半以上が過ぎています。

市民に対する軍の残虐行為に、怒りをおぼえてなりませんけれど、
世間の関心がすっかりウクライナに移ってしまっていることも、気がかりです。
市民が音楽を楽しめるようになるまで、あとどれほどの時間がかかるのでしょうか。
社会の平穏を願いながら、こちらの喉も渇ききっていたところに、
久しぶりにミャンマーからの荷が届いたとの知らせに、
思わず飛びついてしまいました。

そのなかに、ヴェテランのポップ・シンガー、
ミャンマーピー・テインタンの新作がありました。
エーヤワディー川沿いの風景写真に、
赤のストラトキャスターを抱えたステージ写真をコラージュしたジャケットで、
歌謡ロック・スターといった出で立ちが、なんともこの人らしいところです。

ミャンマーピー・テインタンは、もともと洋楽コピー・バンドのプレイボーイで
リード・ギターを務めていた人。歌手として独立後、
自身のバンドL.P.J.(Love Peace and Joy)を結成して活動を始め、
洋楽コピー曲とミャンマータンズィンの両方を歌ってきました。

ずいぶん昔に、ぼくはテインタンの洋楽コピーのCDを買って、
そのあまりの稚拙な演奏ぶりに、アタマを抱えたことがありました。
以来この人を敬遠するようになっていたんですけれど、
テインタンは洋楽コピーばかりでなく、ミャンマータンズィンを取り入れた
自作のオリジナル曲を歌ったアルバムもあることを、後になって知ったんですね。
それが、今回新作と一緒に入ってきた『黄金のトウンナリー』で、
これ幸いと買ってみましたよ。こちらは、ブルース・リーばりの
テインタンのポートレイトの油彩が、ジャケットを飾っています。

大ヒットを呼んで、テインタンの代表作とされるこのアルバム、
なるほど洋楽ポップス側の歌手がアプローチしたミャンマータンズィンらしく、
伝統歌謡の歌手が歌うミャンマータンズィンとは、テイストが違います。
バンド・スタイルのパートが「主」で、伝統歌謡のパートは「従」という主従逆転のほか、
ミャンマータンズィンのメロディが洋楽スタイルによく馴染んでいて、
接ぎ木形式の極端な違和感がありません。
毒のない、ほがらかなミャンマー独特のメロディが、いかにものほほんとしています。

伴奏にヴァイオリン、サロン、サンダヤーが使われているほか、
スライド・ギターがフィーチャーされるのも、耳を奪われるところで、
これって、ひょっとして、ウー・ティンが弾いているんじゃないんでしょうかね。
アルバム最後は、パッタラー(木琴)をフィーチャーした、
サイン・ワインの短い演奏曲で締めくくられています。

なるほど先にこのCDを聴いていたら、
テインタンの印象もだいぶ違ったろうなと思いましたが、
新作もまさしくこの路線のミャンマータンズィンですね。
フォーク・ロック調のちょいダサなサウンドに、テインタンの甘い声がよく合います。

Myanmar Pyi Thein Tan "YADANARPON" Man Thiri no number
Myanmar Pyi Thein Tan "SHWE THONE DARI" Nasa Music Production NSCD9058

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