やっぱ、声がいいよなあ。
このアルバム、聴き始めの頃は、
インパクト弱いかなあとか思ってたんですけどね。
つい何度も聴くうちに、結構気に入っている自分に気付いて、
ちょっと書いておこうかという気になりました。
グライム・シーンから登場した、ガーナにルーツを持つUKラッパー、
コージー・ラディカルの初フル・アルバム。
ざらりとした野太い声が、ぼく好みなんであります。
粘り気のあるフロウに味があって、ずっと聴いていられるタイプですね。
この人のラップを聴いたのは、たぶんルディメンタルが最初。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-11-02
あと、ブルー・ラブ・ビーツにもフィーチャリングされてましたね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2022-03-30
客演王とか呼ばれてるみたいですけど、
それほど熱心にこのテの音楽を聴くわけでない自分でも
よく耳にしているということは、売れっ子の証拠なんでしょう。
あと、ついつい何度も聴きたくなるのは、楽曲がいいからだな。
メロウなネオ・ソウルやジャジーなトラックと、
コージーの濁りのあるラップのバランスが絶妙で、
甘ったるくもならなければ、尖りすぎもしない塩梅が、たいへんよろしい。
生演奏中心のプロダクションも、聴きごたえがあります。
ドラムスは、生演奏とプログラミングの重ね使いをしているし、
弦8人、管3人を使って厚みのあるサウンドを生み出して、
そこにヘヴィーなシンセ・ベースを絡ませて、ぶっといグルーヴを醸し出しています。
Pファンクを参照したようなトラックもありますよ。
マセーゴをフィーチャーした‘Silk’ も、スムースなんだけど、ガッツがあるよね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-05-05
トロンボーン奏者のトレヴァー・マイルズがスーザフォンを吹く‘Payback’ も、
フック利いてるなあ、
アルバム冒頭や中盤、そしてラストに、
ガーナからUKに移住してきたことについて語る母親と父親のナレーションを挟み込み、
最後に自分のために犠牲を払ってくれた両親を、
ロック・スターになぞらえる‘Gangsta’ でアルバムを締めくくっています。
UKブラックのストーリーテラーという気概を、
キラッキラのポップ・センスの中に宿しているコージー、気骨あるね。
Kojey Radical "REASON TO SMILE" Atlantic 0190296403651 (2022)