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スマートな新世代クレオール・ジャズ クレリヤ・アブラハム

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Clélya Abraham  LA SOURCE.jpg

マルチニークやグアドループから、
クレオール・ジャズの若手が、ぞくぞく登場しますね。
出身はマルチニークやグアドループでも、
そのほとんどがフランスの音楽学校で勉強して、パリで活動しているせいか、
ビギン・ジャズ世代のような、地元のダンス・ホールで鍛え上げた現場感はなく、
国際標準の現代的なジャズを聞かせるスマートさが特長といえます。

グアドループ出身のピアニスト、クレリヤ・アブラハムも、そんな一人。
20年にベーシストの兄ザカリー、ヴォーカリストの妹シンシアと、
アブラハム・レユニオンのユニット名でアルバムを出していますが、
今作がソロ・デビュー作。
フランス白人のギタリストとベーシストに、マルチニーク出身のドラマー、
ロラン=エマニュエル・ティロ・ベルトロのカルテット編成で聞かせてくれます。

ティロ・ベルトロは、グレゴリー・プリヴァの16年作“FAMILY TREE” で叩いていた人。
グザヴィエ・ベランのアルバムでも活躍していましたよね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2021-03-11
18年にグレゴリーと来日したときの、シャープで軽妙なドラミングが忘れられません。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-01-22

オープニングは、ミナス・サウンドを思わせる浮遊感あふれる変拍子曲で、
柔らかなスキャットもフィーチャーして、いやぁ、ワクワクしちゃうなあ。
4曲目も1曲目と同じテイストのトラックなんだけど、
これ、音だけ聴いたら、ブラジル人ジャズにしか聞こえないでしょう。

そして2曲目は一転、ビギンですよ。
こんなオーセンティックなビギンを若手ジャズ・ミュージシャンがやるのは、
いまどき貴重。ティロ・ベルトロが、本場もんのビートを繰り出します。

アルバムゆいいつの他人曲の3曲目は、クレリヤが歌うヴォーカル・ナンバー。
この曲のリズムは、なんとマロヤですよ。
こんなところにも、レユニオンとフレンチ・カリブのパリ・コネクションが現れていますね。
フランス海外県同士の交流は、グローバル時代になって登場した新現象で、
ビギン・ジャズ世代にはなかったものです。

ビギンやマロヤなどの伝統リズムを参照するのも、
ブラジル音楽を参照するのも、まったく等価で行われているのが、新世代らしいところ。
変拍子を多用して、内部奏法まで繰り出すラスト・トラックなど、
かなり攻めているんだけれど、演奏の仕上がりは、どこまでもスマート。
ポップ・センスに富んだ、ハイブッドなサウンドが嬉しい一枚です。

Clélya Abraham "LA SOURCE" Le Violon D’Ingres CLA0222 (2022)

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