エチオピア音楽レーベル、ナホンの新作CDを手にしたのは、いつ以来だろう。
もう記憶にもないくらいだから、5年以上は手にしていないはず。
それもそのはず、アメリカではデジタル・リリースのみになってしまったからで、
CDはいまやエチオピアでしか生産されていません。
エチオピアから届いたナホンの新作、アスニ・ズバなる男性シンガーのアルバムで、
VOL.1 とあるのは、デビュー作ということでしょうか。
経歴はわかりませんが、本作はレゲエを中心としたポップスを歌っています。
フォークロアなエチオピア色はないものの、コンテンポラリーなサウンドのなかに、
ほんのりとしたエチオピアらしさが感じられます。
新時代のエチオ・ポップといった佇まいがいいですね。
4曲目の‘Worku Kan Fikatu’ なんて、洗練されたサウンドにティジータのメロディが、
ふわっと香ってくるようなパートがあったりして、新しさをおぼえます。
こういう<さりげなさ>って、これまでのエチオピア音楽にはありませんでしたよね。
アクの強い<エチオピーク>の時代を思うと、ずいぶん遠くにきたもんだ。
プロダクションもすっかり良くなりましたねえ。
ナホンといえば、打ち込み主体の低予算プロダクションがお決まりだった時代が
長く続きましたけれど、すっかり見違えました。
作曲陣4人のなかに、エチオ・ロック・バンド、ジャノのギタリストで
音楽監督のマイケル・ハイルがいるのが、気になりました。どの曲を書いたんだろう。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-03-21
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-07-03
キレのある歌いぶりを聞かせたかと思えば、
粘っこくも歌えるし、さらりと歌うこともできる。
曲の表情に合わせて自在な歌いぶりを聞かせる、アスニのヴォーカルが魅力。
語尾につける独特のヴィブラート使いや、こぶし回しもうまいし、
R&B、ラガマフィン、さまざまなサウンドに柔軟に対応できる人です。
全16曲、収録時間69分強は、詰め込みすぎにも思うけれど、
新人らしいイキオイが伝わってくる力作です。
Asne Zuba "EFOY" Nahom no number (2022)