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アメリカーナ・エレクトロニック・ジャズ ジャーメイオ・ブラウン

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Jaimeo Brown Transcendence  WORK SONGS.jpg

アラン・ローマックスがミシシッピの刑務所パーチマン・ファームで録音した、
囚人たちのワーク・ソングをサンプルしたトラックから始まるアルバム。
ほかにも、ヴァージニアで録られたワーク・ソングをサンプルしたトラックもあり、
タイトルが示すとおり、新たなるスピリチュアル・ジャズの誕生を予感させる作品です。

ジャーメイオ・ブラウンというこの若手ドラマー、これが2作目ということで、
てっきり黒人とばかり思ったんですが、実は白人なんですね、これが。
う~む、これが現在のアメリカのフトコロの深さといえるのかもしれないなあ。
むしろ黒人だと思いこんだぼくの方が、
ポリティカリー・コレクト的にNGな発想というか、視野狭窄でありました。

ポリティカリー・コレクトネスといえば、その行き過ぎが招いた揺り戻しが、
ドナルド・トランプの登場を招いたようにも思えて、暗澹たる気分になりますけれど、
こういう白人が登場したことは希望の光で、アメリカの健全さの一面を見る思いがしますね。

そして、この作品、コンセプト・アルバムにありがちな敷居の高さや、
かつてのスピリチュアル・ジャズにあった、観念的なところがないのもいいですね。
ジャズ、ブルース、ロック、ヒップホップ、エレクトロニクスを横断したサウンドは、
エネルギーに満ちながらも、今の若手ジャズ世代らしいスムーズさがあります。
フリー/コンテンポラリーな手さばきも成熟したということなんでしょうか、
JD・アレン、ジャリール・ショウ、ビッグ・ユキという
骨太な若手ジャズ実力派を揃え、コンセプトによく応えたプレイを繰り広げます。

さらにこの作品の面白さは、黒人労働歌ばかりでなく、日本の仕事唄まで取り上げたこと。
4曲目に山形県民謡の「紅花摘み唄」を、
10曲目に岡山県北木島の作業唄「北木島石切唄」をサンプルしています。
ちなみに、どちらも音源の出所は、スミソニアン・フォークウエイズ盤の
“TRADITIONAL FOLK SONGS OF JAPAN” FW04534 (61)とのこと。

ブラック・スピリチュアルに通じるブルージーな曲に次いで、
いきなりオリエンタルなこぶしが出てくるのには、最初驚かされましたが、
ワーク・ソングのテーマを広く捉えてアジアにまで視座を伸ばし、
柔軟なディレクションを施したその手腕は鮮やかです。
アメリカーナ・エレクトロニック・ジャズとでも呼びたい、
見事なコンセプチュアル・アルバムです。

ちなみに本作のレーベル、マリのアワ・サンゴを出していたところと同じですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-12-29
ニューヨークのこのレーベル、ちょっと注目したくなりました。

Jaimeo Brown Transcendence "WORK SONGS" Motéma MTACD191 (2016)

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