ベルギーって、面白いバンドが出てくるなあ。
ムラトゥ・アスタトゥケのエチオ・ジャズにインスパイアされたバンドの登場です。
ブラック・フラワーは、サックス兼フルート奏者のナタン・ダムスをリーダーに、
コルネット兼アルト・ホルン、ドラムス、ベース、キーボードの5人組。
一昨年に出ていた本作がデビュー作だそうです。
エチオ・ジャズをベースに、アフロビートにグナーワなどもミックスしていて、
同じベルギー出身のシンク・オヴ・ワンにも通じる音楽性を聞かせます。
じっさいコルネットのジョン・バードソングは、シンク・オヴ・ワンでプレイしていたことがあるとのこと。
メンバーの来歴を見ると、このバンドの音楽性がよくわかります。
リーダーのナタン・ダムスとベースのフィリップ・ヴァンデブリルは、
アントワープ・ジプシー・スカ・オーケストラの出身で、ベースのフィリップは、
コチャニ・オルケスタルやマルコ・マルコヴィッチのほか、リー・ペリーとも共演歴があるとのこと。
シモン・セゲルスは、マーク・リボーと共演歴があるジャズ・ロック・ドラマーで、
ゲスト参加のギターのスモーキー・ホーメルは、ベックやトム・ウェイツのバックを務めた人です。
象のいななきを模したアルト・ホルンが咆哮するエネルギッシュなトラックから、
エチオピア正教会のスピリチュアルな雰囲気を醸し出す静謐なトラックまで、
適度にラフでダイナミクスを活かしたミックスによって、ヌケのいいサウンドが繰り広げられます。
ラストのナタンがサックスとメロディカを持ち替えて吹くタイトル曲では、
ムラトゥ・アスタトゥケのエチオ・ジャズとオーガスタス・パブロのダブが交叉する、
ミスティックなオリエンタル・ムードがいっぱい。
アビシニアを夢見たラスタファリアンという構図を、
ヨーロッパの視点から再構築したとでもいうべき演奏じゃないでしょうか。
エチオピア=ジャマイカ=ヨーロッパ・トライアングルの新たな夜明けと呼びたい、
秀逸なトラックです。
Black Flower "ABYSSINIA AFTERLIFE" Zephyrus ZEP020 (2014)