こりゃ、オドロいた。
こんなステキなシンガー・ソングライターが、インドネシアにいたなんて。
この人もまた、グレッチェン・パーラト以降の新世代ジャズ・ヴォーカリストですね。
日本初入荷なんですが、なんと7年も前の作品なのか。
これまで話題に上らなかったのは、インドネシアという地の利の悪さのせい?
新世代ジャズの文脈でも、アジアのシティ・ポップという文脈でも、
見逃せないスゴイ逸材ですよ。
なんでも父親が熱烈なジャズ・ファンで、4歳からピアノとサックスを演奏し、
やがて歌も勉強して、10代からステージに立っていたというキャリアの持ち主。
11歳で著名な音楽トレーナーに才能を見出され、
13歳からさまざまなジャズ・フェスティヴァルに参加、
16歳になってオーストラリアへ留学し、
西オーストラリア・パフォーミングアート・アカデミーで、
本格的な音楽教育を受けています。
8年間のオーストラリア生活を経て帰国し、このデビュー作をすぐに録音したわけね。
‘Take Five’ のリフを思わすピアノのイントロで
スタートする1曲目から、ハッとさせられます。
テクニカルな変拍子曲で、ヴァースが5+6の11拍子、ブリッジが6拍子という構成。
細かくビートを割っていくドラムスがピアノと絡みあうインプロヴィゼーションを、
たっぷりと繰り広げるんですが、その前後を温かなアメリアの歌声がサンドイッチしていて、
これ、ジャズ・ファンにはたまらない構成ですね。曲作りのツボを知っている人です。
2曲目はローズのメロウな響きとウッド・ベースの深い音色にのせて、
ゆったりと穏やかな歌声を聞かせるジャジー・ポップ。
う~ん、沁みますねえ。
スウィンギーなリズムへのノリもバツグンで、ふくよかで丸みのある美声が、
コンテンポラリーなサウンドとベスト・マッチングですね。
どの曲もたっぷりとインプロヴィゼーションのパートを設けていて、
イントロで‘Here we go’ とメンバーに声をかけ、
エンディングを決めたあと小さく‘yes’ とつぶやく3曲目でも、
ヴォーカル曲であることを忘れさせるほど、ジャズのスリル十分。
ミュージシャンは全員インドネシア人のようですが、
実力者揃いで聴き応えがあります。
ガーシュインの‘Someone To Watch Over Me’ をのぞいて、
6曲すべてアメリアのオリジナル。
歌い手としても、コンポーザーとしても、ずば抜けていて、
16年にクリスマス・アルバムを出したようですが、その後の新作はまだかな。
楽しみに待ちましょう。
Amelia Ong "AMELIA ONG" Demajors no number (2015)