すげえ! インドネシアのフュージョンも、こんな高みに到達したのか。
フュージョンというより、プログレッシヴ・ジャズ・ロックの大傑作ですね、これは。
90年代に若手スゴ腕ギタリストとして名をはせ、
いまやインドネシアを代表するギタリストと成長したトーパティが放った最新作。
プログレが苦手なぼくをもねじ伏せる圧倒的なエネルギー、
そのパワー・プレイに完全降参です。
いわゆるガムラン・フュージョンみたいなアルバムは、これまでにもたくさんありましたけれど、
楽曲の構成、アレンジ、各楽器の演奏水準、録音のクオリティ、すべてにおいて
これほどの作品は、過去のインドネシアにありませんでした。
トーパティのギター、ベース、ドラムスに、クンダンとスリンを加えた
エスノミッションを名のる5人編成のバンドで、
インドネシアの伝統音階ペロッグをうたう“Pelog Rock” から、アルバムはスタートします。
シカケの多い緻密に計算された楽曲と、日本人にもなじみやすい5音音階のメロディに、
なんだか「歌舞伎ロック」みたい、てな印象も残したりするんですが、
ドラマティックなアレンジは絢爛豪華で、
くるくると変わる場面展開は、まさに歌舞伎の回り舞台を観るかのようです。
変拍子とポリリズミックなリズム構成の合間を縫うように、
攻撃的なギターがざくざくと響き渡り、
息つかせぬ怒涛のプレイが、小憎らしいほどキマっていて、ノせられちゃいますよ。
竹笛のスリンも、伝統音楽やダンドゥットで演奏されるかすれた音色ではなく、
フルートのような12平均律に正確なピッチを聞かせるところが、ハイテクな感じ。
クンダンとリズム・セクションが繰り出すポリリズムや、
インドネシアの伝統音階をふんだんに取り入れた、
エスニック・フュージョンの装いは、国内より国外にアピールするように思えますね。
トーパティの過去作では、もっとライト・タッチのフュージョンや、
アクースティックな演奏をやっていたような記憶がありますけれど、
本作にはそういった素振りはまったくなし。
一発録りなんじゃないかとも思える、ライヴ感みなぎるダイナミックさが圧巻です。
Tohpati Ethnomssion "MATA HATI" Demajors no number (2016)