エルメート・パスコアルが在籍した伝説のブラジリアン・ジャズ・コンボ、
クアルテート・ノーヴォのギタリスト、エラルド・ド・モンチの息子がデビュー。
ルイス・ド・モンチも父親譲りのギタリストで、デビュー作の本作は、
お父さんのエラルドをはじめ、御大エルメートと奥さんのアリーニ・モレーノもゲスト参加。
メンバーには、エルメートのバンドで長年ドラマーだったネネほか、エルメート人脈がずらり。
エルメート一派じゃ、ぼくの守備範疇外だなと、なんの期待もせず試聴したところ、
ポップなメロディに、スムースなフュージョン・サウンドが飛び出したのには、ビックリ。
このサウンドのテクスチャーは、ジャズじゃなくて、フュージョンのセンスだよねえ。
ルイスのフレージングは、オーソドックスなジャズ・ギターのスタイルで、
トリッキーなお父さんのギター・プレイとは、まるで趣向が異なります。
イノセントなエルメートの音楽性からの影響も、ほとんど感じられません。
ということで、ぼくのようなアンチ・エルメート・ファンには、たいへん好ましい人でありますが、
エルメート・ファンからは、軟弱フュージョンとか悪口言われちゃいそう。
レパートリーは自作曲を中心に、お父さんの曲や、
ピシンギーニャやジャコー・ド・バンドリンの定番ショーロなどを演奏しています。
多重録音されたギターとドラムスで聞かせるピシンギーニャの“Lamento” や、
ギター3台で演奏したジャコーの“Noites Cariocas” は、
ジャズ・ショーロといた趣が聴きものとなっています。
ルイスは、エレクトリック、アクースティック(ナイロン・スティール両方)、カヴァキーニョのほか、
フレットレス・ベースやトランペットを多重録音で演奏しています。
正統派といえるジャズ・ギターの腕前ばかりでなく、
多重録音で生み出すサウンドの豊かなアイディアは、
プロデューサーとしての才能を強く感じさせる人ですね。
Luis Do Monte "FRACTAL" Biscoito Fino BF419-2 (2016)