マレイシアの伝統家屋の室内で、伝統衣装を身にまとった女性がたたずむジャケット。
昔のマレイのカンポン(村)の暮らしのイメージを、
グラフィック化したジャケットは、中身が伝統歌謡であることを伝えてくれます。
ムラーユ歌謡を久しく聴いていなかっただけに、即飛びついちゃいましたよ。
誰のアルバムかと思えば、3年前、みずみずしい伝統クロンチョンを聞かせてくれた
新人女性歌手ジャミラー・アブ・バカルじゃないですか。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-03-06
いやー、こりゃ嬉しいですねえ。
ここのところマレイシアでは、このテの伝統歌謡がまったくといっていいくらい
リリースされなくなってしまったので、これは貴重な一作といえます。
今回はクロンチョンばかりでなく、シティ・ヌールハリザが
『東方のともしびコンサート』でも歌っていた“Jangan Ditanya” はじめ、
マレイシア伝統歌謡の名曲を交えながら歌ったポップ・ムラーユ・アルバム。
ジャミラーは柔らかにこぶしを回しながら、若さに似合わない落ち着いた歌声で、
しっとりと歌っているんですよ。いいですねえ。
他の歌手だったら、ここで声を張るだろうなというところでも、
けっして強く歌わず、抑えた歌いぶりに徹するところは、好感度高しです。
アコーディオン、ガンブース、ルバーナの響きをたっぷりと生かしたムラーユ、
リズム・セクションやシンセサイザーを取り入れつつ、チュック、チャックの音色が
耳残りするクロンチョンと、プロダクションも申し分ありません。
庶民の食卓には定番の秋刀魚が高騰して、いまや稀少な存在になりつつあるのと、
どこか似た境遇を感じる、マレイシアの庶民が愛した伝統歌謡の快作です。
Jamilah Abu Bakar "BAYUN TARI PANGLIMA" Warisan/PMP Entertainment WR1464/PMP6171 (2015)