以前ママル・ハンズの記事で、
「スウェーデンのエスビョルン・スヴェンソンを継ぐ人たち」と書き、
久しぶりにエスビョルン・スヴェンソン・トリオのCDを棚から取り出す気になりました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-04
エスビョルン・スヴェンソンは、キース・ジャレットの影響下のピアニストという立ち位置から、
一歩も二歩もハミ出たポスト・ロック的なサウンド・メイキングを成し遂げた人で、
その大胆なリズム処理に、ジャズ新時代を予感させたものでした。
とはいいながら、そのいかにも白人的な音楽性というか、
北欧ジャズらしい純粋培養な美しさは、
ぼくが心底から惚れ込めるタイプのジャズではなく、
ECM作品にありがちな、アタマで感心はしても、
身体は悦ばないみたいな印象は拭えなかった、というのが正直なところ。
ジャズをはみ出た新しさを十分に感じじつつ、
当時それほど聴き込んだわけではありませんでした。
なので、10年ぶりに聴き返してみたら、
あれ? いいじゃん!と印象激変したのには、ちょっとびっくり。
ヒップホップを生演奏にフィードバックして、
新しいリズム表現を得たと騒がれるいまどきのジャズよりも新鮮で、
ライヴ盤のグルーヴ感たっぷり、ダイナミックな演奏には、身体の芯を揺さぶられました。
昔聴いた時は、ディスク2のラスト・トラックのような昂揚感あふれる演奏にも、
こういうのが好きな人はタマらないんだろうなという、醒めた感想を抱いていたのに、
どうしたことでしょう。素直に盛り上がれちゃって、ちょっと自分でも不思議な気分。
ママル・ハンズ、ゴーゴー・ペンギン、フォックス・キャプチャー・プランのような、
少女趣味なおセンチ・メロディに馴らされたせいなのかなあ。
クラシカルなメロディの美しさって、
どうもブルー・ノート育ち(レーベルにあらず、スケールの方ね)の人間には、
奥行きがないというか、深みがないように感じてしまうんですよね。
でも、それって、思い込みなのかも。
先入観を捨てて、もっと虚心で音楽と対峙する必要があるなと、
ちょっぴり反省する機会になったのでした。
E.S.T. (Esbjörn Svensson Trio) "SEVEN DAYS OF FALLING" ACT Music ACT9012-2 (2003)
E.S.T. (Esbjörn Svensson Trio) "LIVE IN HAMBURG" ACT Music 2CD6002-2 (2007)