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乞再来日 ウィリアム・ベル

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声を聴いただけで、その人の誠実さが伝わってくる、
そんな思いにとらわれてしまうシンガーに、ウィリアム・ベルがいます。
もちろん、じっさいの人柄を知っているわけじゃありません。
でも、歌詞を噛み締めるように丁寧に歌うベルの歌いぶりは、
<誠実>をおいてほかに、うまく当てはまる言葉が見つかりません。

思えばぼくは、ウィリアム・ベルの魅力に、長い間気付けずにいました。
“You Don't Miss Your Water” といった名曲は、十代の時すでに聴いていましたけれど、
オーティス・レディングに夢中になっていた当時は、
シャウトをするわけでなく、ディープな声でもないウィリアム・ベルは、
ぼくにはマイルドすぎて、インパクトが感じられなかったんですね。
サザン・ソウルは、ディープであればあるほど味があるという、単純な聴き方をしていたために、
ウィリアム・ベルの良さに気付けなかったのは、浅はかと言うほかありませんでした。

アクのなさゆえに、ぼくにとってとっつきが悪いサザン・ソウル・シンガーだったわけですが、
子持ちとなった30代はじめだったか、ひさしぶりに聴いたウィリアム・ベルの歌が胸に染みて、
こんな素晴らしいシンガーだったのかと、ようやくその良さに開眼したんでした。
その時あらためて、ソウルフルという言葉が持つ奥深さを、
ウィリアム・ベルから教わったような気がしたものです。

さらに、もうひとつ気付いたのが、曲の良さ。
ソングライターとしての才能にも感じ入りました。
ドラマティックとは無縁のさりげなさや、おやと思わせるコード展開に、
ベルのソングライティングの個性が光ります。

そして、突然届けられた新作の登場。
御年76歳、新曲をひっさげ、復活した名門スタックスからのリリースと聞いて、
これはと期待を寄せましたが、予想を超える素晴らしさでした。
レトロではない、現在の息吹が伝わってくるサザン・ソウルですよ。
軽いミディアムにこそ味わいが溢れ出るベルの歌の良さ、楽曲の良さが全面展開。
演奏も含めその完成度の高さは、ただごとじゃないレベルのアルバムじゃないですか。

いやぁ、こんな歌が聞けると知っていたら、昨年の初来日、足を運ぶべきだったなあ。
あぁ、悔しい。ぜひ再来日を切望します。

William Bell "THIS IS WHERE I LIVE" Stax STX38939-02 (2016)

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