うわぁ、とうとうCD化されたか。
梅津和時と原田依幸が渡米して、当時のロフト・ジャズ・シーンの精鋭たちとセッションした、
生活向上委員会ニューヨーク支部。
デザインするという意識がまるでない、いかにも自主制作なジャケットは、
およそ購入意欲のわかないシロモノで、
行きつけのジャズ喫茶で聴けるからいいやと思っているうちに、そのジャズ喫茶も店じまいして、
すっかり忘却の彼方になってしまいました。40年近く前の大学生だった頃の昔話です。
それ以来、ずっと耳にしていなかったわけですけれど、
冒頭「ストラビザウルス」のホーン・リフがすごく懐かしくって、鳥肌が立っちゃいました。
サン・ラ・アーケストラのトランペッター、アーメッド・アブドゥラーと
梅津のアルト・サックスによるユーモラスなリフに続いて、
集団即興になだれ込んでいくカッコよさは、ぜんぜん古くなってないですねえ。
ラシッド・シナンのドラムスがキレまくりで、これぞフリー・ジャズの醍醐味ですよ。
梅津が作曲したラスト2分弱のニュー・オーリンズ風の陽気なメロディも、楽しいかぎり。
その後ニューヨークから帰った二人は、集団疎開を新たに結成し、ライヴ盤「その前夜」を、
生活向上委員会ニューヨーク支部同様、コジマ録音から出したんでしたね。
当時ぼくは、コジマ録音とお付き合いがあったので、高円寺の小島さんのおうちで、
この集団疎開のレコードを聞かせてもらった覚えがあります。
当時は「ひどいジャケットだな。フリー・ジャズっていうより、ビンボくさいフォークみたい」
と思ったもんですけれど、正直これがCD化されるとは予想しませんでしたねえ。
結局、梅津和時と原田依幸の二人に親しみを覚えながらも、
「ジャケ買い」ならぬ「ジャケ敬遠」をし続けて、
ようやく二人のレコードを初めて買ったのが、81年の「ダンケ」でした。
一緒に買ったのが、宮野弘紀のデビュー作「マンハッタン・スカイライン」だったもんで、
レコード屋のオヤジから「フリージャズとフュージョンの両方、聴くのかい」と嗤われましたけども。
この頃、二人はすでに生活向上委員会大管弦楽団で、大ブレイクしていました。
その後、それぞれの方向性が変わっていき、二人別々の道を歩むことになったんですね。
ぼくはといえば、どくとる梅津バンドからKIKI BANDと、
もっぱら梅津和時のライヴに足を運んでいましたけれど、
原田依幸のライヴは一度も観たことがありませんでした。
今回30年ぶりに二人が合流し、生活向上委員会東京本部として、
10月5日の京都を皮切りにコンサートを行うという、ビッグ・ニュースが飛び込んできました。
しかも、ドン・モイエを招いてのトリオ編成だというんだから、これは事件です。
ぼくは早速、最終公演10月10日の高円寺のチケットを確保しました。
カエターノ・ヴェローゾなんぞ観てる場合じゃありませんよ。
かつて原田依幸ユニットで、セシル・テイラーのドラマー、アンドリュー・シリルと共演した時は、
原田に合わせるだけのシリルが物足りなかったウラミが残っているので、
今回のドン・モイエには、期待したいですねえ。
なんたって、元AECなんだからさあ。
果たして、今回の公演、2016年の「ジャズ十月革命」となるや否や。楽しみです。
生活向上委員会ニューヨーク支部 「SEIKATSU KŌJYŌ IINKAI」 オフ・ノート NON25 (1975)
集団疎開 「その前夜」 デ・チョンボ/ブリッジ BRIDGE049 (1977)
梅津和時+原田依幸 「ダンケ」 P.J.L MTCJ5531 (1981)