ポスト・アパルトヘイト世代の南ア・ジャズを、ただいま見直し中。
まったく知らずにいたミュージシャンがあまりに多く、めまいがするほどです。
アルバムもiTunes でいろいろ見つかるものの、
フィジカルが入手困難で、閉口しております。
そうしたなかで知った、サックス奏者のマッコイ・ムルバタ。
この人はポスト・アパルトヘイトの新世代ではなく、中堅世代の人ですね。
南アフリカ・ミュージック・アワードの最優秀ジャズ・アルバム賞を、
03年・05年・08年と3度も獲ったというツワモノですよ。
その3度目の受賞に輝いた07年作“THE BRASSKAP SESSIONS VOL. 1” と、
14年に出た続編の“BRASSKAP SESSIONS VOL. 2” を手に入れることができました。
マッコイ・ムルバタの経歴を調べてみると、
生まれは、59年ケープタウン、ランガ・タウンシップ。
シオン教会の賛美歌や伝統的な心霊治療師のチャント、
自宅の向かいでリハーサルをしていた、
サックス・ジャイヴ・バンドの演奏を聴きながら育ったといいます。
76年からフルートを始め、79年には自分のバンド活動をスタートさせる一方、
80年代を通して数多くのカヴァー・バンドでプレイし、
セッション・ミュージシャンとして名を挙げたようです。
89年、ジャズ/フュージョン・シンガーのジョナサン・バトラーが所属する、
イギリス、ズンバ・レコーズのプロデューサーに認められ、デビュー作をリリース。
その後自己のバンド、ブラザーフッドを結成し、90年にギルベイ音楽賞を受賞しています。
92年にはヒュー・マセケラのバンドに加入してツアーに同行するなど、
着実にキャリアを積み、名実とも南ア・ジャズのトップ・プレイヤーとなりました。
マッコイが主宰するブラスカップ・セッションは、若手とヴェテランが、
互いに交流するプラットフォームとして企画されたプロジェクトで、
07年の第1作では20名を超すミュージシャンたちが集い、制作されています。
8管編成のホーン・アンサンブルをフィーチャーした曲もあれば、
モザンビーク生まれのシンガー、チョッパが歌う曲あり、語りの入る曲あり、
「ソマリア」とタイトルされた曲ではウードがフィーチャーされるなど、
意欲的なセッションとはいえ、ややとりとめのない感は拭えません。
むしろ充実したセッションとなったのは、14年の第2作の方。
洗練された南ア・ジャズのなかに、
マラービを感じさせる伝統色がにじみ出ているところが嬉しいじゃないですか。
第1集のような語りではなく、南アらしい歌やコーラスをフィーチャーしたところもいいですね。
6曲目のゴスペル調も、まさに南ア音楽の逞しさに溢れていて、頬が緩みます。
McCoy Mrubata "BRASSKAP SESSIONS VOL. 2" Kokoko Music KMCD001 (2014)