ずいぶんと変わった名前ですね、キャク・キャダフって。キャブ・キャロウェイみたいな。
アンゴラ人にとっても発音しにくい名前らしく、インタヴューでは必ず質問されていますよ。
インタヴューで語るその由来によれば、
名前の「キャク」はキコンゴ語の yours を意味する語だそうで、
「キャダフ」というのは、母親の姓のフィネーサと父親の姓のフェルナンデスのイニシャルに、
名前の「キャク」の kya を合成して造ったんだそう。
本名はエドゥアルド・フェルナンデスと、いたって普通の名前です。
そのキャク・キャダフの名を、意識するようになったのは、
ラジオ・ルアンダが主催する2014年のトップ・ラジオ・ルアンダで、
ベスト・キゾンバ、年間男性歌手、最優秀男性歌手の3部門を受賞したほか、
文化省が特別後援するアンゴラ音楽賞でも、
2014年最優秀新人賞ほか2部門の賞を獲ったということを知ってから。
アンゴラ音楽賞といえば、2014年にエディ・トゥッサが最優秀センバ賞を獲り、
2015年にヨラ・セメードが、最優秀女性歌手、最優秀アルバム賞(“FILHO MEU”)、
最優秀キゾンバ賞(“Volta Amor”)、最優秀センバ賞(“Você Me Abana”)の
4部門を受賞したんですよねえ。
これを知って入手した“FILHO MEU” はまさに大当たりで、
ここ半年のヘヴィー・ローテーション盤となりました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
そんなわけで、キャク・キャダフも聴いてみなければと、
手に入れたのが、14年暮れにリリースされたデビュー作。
まずびっくりなのが、そのゴージャスなレコーディング。
打ち込み代用で人件費をケチらないところが、今のアンゴラのポップスの良さとはいえ、
ストリングスやホーンズなど、惜しげもなく人員を使った生楽器使いは、
新人のデビュー作らしからぬ、破格な贅沢さじゃないですか。
アコーディオンが醸し出す爽やかな哀感に、アンゴラらしさがにじみ出ていて、
センバ新世代がドープなクドゥロから、
ミュージック・シーンのメインストリームを取り戻したことを実感させます。
キャク・キャダフは、82年、アンゴラ北西部ザイーレ州の州都ンバンザ=コンゴの生まれで、
アゴスティーニョ・ネト大学で心理学を学んだという人。
もともと歌手志望ではなかったようですが、学生時代に書いた曲が評判となってから、
コンテストに参加し始め、プロとなったという経歴の持ち主です。
テタ・ランドとジェイムズ・ブラウンの影響を受けたそうで、
ジェイムズ・ブラウンはピンときませんが、
テタ・ランドゆずりのフォーキーな哀愁味がいい味になっていますね。
マラヴォワとセンバが合体したような曲も極上です。
Kyaku Kyadaff "SE HUNGWILE" Go Edições no number (2014)