うわー、こんなサルサ・バンドがペルーから出てくるとは。
「サボール・イ・コントロール」なるバンドのネーミングにも、
ありし日のサルサを知る者には、グッとくるものがありますけれど、
サウンドにみなぎる70年代当時のままの熱っぽさは、まさに感動的です。
バンド・リーダーで音楽監督を務めるサックス奏者ブルーノ・マチェルは、
70年代サルサの復活を目論見、00年にサボール・イ・コントロールを結成したとのこと。
達者なプレイヤーを集めて、往年のサウンドを復活させることはできても、
あの当時のギラギラとしたストリートの雰囲気や、
サルサにかける情熱に溢れた空気感を生み出すのは、そうたやすいことではありません。
過去のポピュラー音楽を再現するのに一番高いハードルは、
時代を背負った空気感の再現で、こればかりは演奏家のテクニックや
エンジニアリングだけで解決できる問題ではありませんよね。
社会が変化し、音楽のバックグラウンドが変容している状況のもとでは、
いくらサウンドだけを再現したところで、その音楽が持つテクスチャを蘇らせることは不可能です。
12年作の“CRUDA REALIDAD” を聴いてぶったまげたのは、
その不可能とも思える空気感が、リアルに蘇っていたからでした。
これって、70年代ニュー・ヨークの若いラティーノたちが置かれていた境遇と、
現代のペルーのリマの若者たちが抱える現実とが、
共振しあう<何か>があってのことなんですかねえ。
そのナゾを知りたくなり、旧作のバック・オーダーをお願いしていたところ、
1年以上かかって、09年作と11年作がようやく入荷。
どちらも12年作と変わらぬ濃密な70年代サルサが詰まっていて、またもウナらされました。
サックス2、トロンボーン2の編成が生み出すサウンドは、
特定のオルケスタをお手本にしたようには思えませんが、
雰囲気はエクトル・ラボー在籍時のウィリー・コロン楽団に、とてもよく似ています。
やんちゃな若者といったムードが、ね。
初期のウィリー・コロン楽団といえば、技術的にはあまり高くなく、
そのラフなアンサンブルこそに、
むせかえるようなストリート臭が溢れていたバンドでした。
サボール・イ・コントロールのジャケットも、ガラの悪そうな雰囲気が、
演出であるにせよ、あの頃のコロン楽団と共通しているじゃないですか。
全曲リーダーのブルーノ・マチェルの作曲。
なぜこれほどまでに70年代の空気感を再現できるのかは、結局わかりませんでしたけど、
デスカルガにおけるブルーノのブロウがとびっきり熱く、
ブルーノのミュージシャンシップがメンバーたちを鼓舞しているのを、強く感じさせます。
Sabor Y Control "CRUDA REALIDAD" Descabellado no number (2012)
Sabor Y Control "ALTA PELIGROSIDAD" Descabellado no number (2009)
Sabor Y Control "EL MÁS BUSCADO" Descabellado no number (2011)