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サルサ・クリオージャは濃い口の歌手で コサ・ヌエストラ

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Cosa Nuestra  PREGONEROS DE LA CALLE.jpg

時代錯誤ともいえるサボール・イ・コントロールのサウンドに比べると、
クリオージョ音楽の才人といえる、
プロデューサーでギタリストのティト・マンリケ率いるコサ・ヌエストラは、
まさしく現代らしいオルケスタといえるでしょうね。
その洗練されたサウンドのテクスチャは、21世紀ならではという手触りがあります。
それゆえ、サボール・イ・コントロールのようなストリート感はありません。

新作も、懐かしのサルサ名曲をクリオージョ音楽のバルス・マナーでアレンジするという、
ティト・マンリケがコサ・ヌエストラで意図する、
サルサ・クリオージャのコンセプトに従った仕上がりとなっています。
今回の目玉は、なんといっても「アナカオーナ」でしょう。

ティテ・クレ・アロンソの名曲で、チェオ・フェリシアーノの名唱が忘れられない、
サルサ・ファンにはおなじみの曲ですが、これをバルスにアレンジすると、
えぇ? これが「アナカオーナ」?といぶかるような不思議な仕上がりで、
まったく別の曲のように聞こえます。
たしかにメロディは「アナカオーナ」なんだけど、
3拍子にすると、こうも雰囲気が変わるかという驚きのアレンジで、
コロの入り方も、チェオでおなじみのヴァージョンとは違っています。
ちなみに、曲名も“Anacaona” でなく、“Ana Caona” と書かれていますね。

ほかには、「トロ・マタ」に注目が集まるかな。
もっとも、この曲については、里帰りヴァージョンというべきものでしょうね。
もともとカイトロ・ソトが作曲したアフロ・ペルーの名曲を、
サルサにアレンジしてセリア・クルースが歌い、大ヒットとなったんですからね。
サルサに生まれ変わり、多くのシンガーにカヴァーされた「トロ・マタ」が里帰りしたというか、
これが本場のオリジナルといった仕上がりでしょう。

この新作は、ティト・マンリケらしい才が冴えた快作と認めつつも、
個人的に残念なのは、多くのゲスト歌手の参加によって、
クリオージョ音楽のディープな味わいが薄まってしまったことです。
13年の前作にもその傾向があったんですが、今回も起用された歌手によって、
他の歌手だったらよかったのにという曲があることは否めません。
マイケル・スチュアートやマジート・リベーラなんて歌手じゃ、
クリオージョ音楽の味わいを出すなんて、どだい無理。
明らかなキャスティング・ミスですね。

Tito Manrique Y Cosa Nuestra  SALSA CRIOLLA 1.jpg

ぼくがティト・マンリケのサルサ・クリオージャというコンセプトに
ノックアウトされたのは、“SALSA CRIOLLA 1” でした。
クリオージョ音楽の粋ともいうべき、素晴らしくコクのあるノドを持つ
フェリクス・バルデロマールとホセー・フランシスコ・バルデロマールの二人を起用して、
サルサ名曲を歌うというオドロキが、あのアルバムを感動的なものにしていました。

その後、ティト・マンリケがアフロ・ペルー寄りの選曲をするなど軌道修正するなかで、
前作からバルデロマール兄弟の起用をやめてしまったのは、
ためすがえすも残念でなりません。
単にコサ・ヌエストラが、サルサ名曲をクリオージョ音楽にアレンジして、
さまざまな歌手に歌わせるプラットフォームにするのではなく、
濃い口のクリオージョ音楽の歌い手に歌わせるところに、
この企画の良さがあったことを、ティト・マンリケに再考してもらいたいですねえ。

Cosa Nuestra "PREGONEROS DE LA CALLE" Play Music & Video no number (2016)
Tito Manrique Y Cosa Nuestra "SALSA CRIOLLA 1" Sayariy Producciones 7753218000074 (2011)

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