ストラットが、ついにやってくれましたよ。
エボ・テイラーに続いて、ハイライフのヴェテラン・シンガー、
パット・トーマスをカムバックさせ、新録アルバムを制作したので、
いつか黄金時代の録音もまとめてくれるはずと、期待していたんです。
今回リリースされたパット・トーマスの編集盤は、
ソロ歌手として独立する以前の、名門ダンス・ハイライフ・バンド、
ブロードウェイ・ダンス・バンド在籍時の60年代録音に始まり、
深刻な経済危機に陥ったガーナを離れる直前の81年録音まで、
パットの全盛期を俯瞰したアルバムとなっています。
選曲でニンマリとしたのが、オヤタナー・ショウ・バンドにゲスト参加して歌った
“Yaa Amponsah” を収録していたこと。
アフリカ音楽ファンにはお馴染みのパームワインの古典曲「ヤー・アンポンサー」を、
ファンキー・ハイライフにがらりと変身させた名カヴァーです。
ベンベヤ・ジャズの“Mami Wata” を借用し、ギタリストのナナ・オフォリのブルース・リフも
キャッチーなヴァージョンとなっているんですね。
75年のLP“YEREFREFRE” のB面ラストに収められていた曲ですが、、
本編集盤ではシングル盤の音源を使っていて、シングル盤のタイトルは
“(Super) Yaa Amponsah” と、頭に「スーパー」を付けているのが面白いですね。
初めて聴く曲も多く、パットが最初に結成したスウィート・ビーンズでのヒット曲
“Revolution” は本格的なレゲエで、その高い演奏力にうなってしまいました。
パットの歌いぶりも、ジミー・クリフを思わせるみずみずしいもので、魅入られましたよ。
ほかにも、全盛期のファンキー・ハイライフのグルーヴに溢れた曲がてんこ盛りで、
これはパット・トーマスの代表作というだけでなく、ファンキー・ハイライフの名盤といえますね。
ライナーのパット・トーマスへのインタヴューを読んで、ああ、そうなのかとわかったのは、
ボガ・ハイライフのボガ burger の意味。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-03-25
80年代の経済危機で職を求めてドイツへ渡ったガーナ人たちのことを、
ガーナで burgers と呼んだのだそうです。
パットもドイツへ渡ったあと、ロンドンやトロントなど転々としたようですね。
また、ほかにもわかった事実としては、パットのブロードウェイ・ダンス・バンドへの参加年。
拙著『ポップ・アフリカ700/800』や下の記事で、「69年」と書いていたのですが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-06-21
パットはインタヴューで「67年」と答えています。
しかし、ブロードウェイ・ダンス・バンドがウフルー・ダンス・バンドに改名したのは64年なので、
67年では整合せず、64年以前でないとおかしいことになります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
パットの記憶違いなのか、改名年の64年が間違いなのか、よくわかりません。
ちなみに、CDの背やディスク・レーベルには“1967-1981” とあるのは、
このパットの言によるものと思われますが、なぜか本作の表紙には“1964-1981” とあります。
「1964」が単なる誤植なのか、それともほかに何か理由があるのか、謎が残ります。
Pat Thomas "COMING HOME : ORIGINAL GHANAIAN HIGHLIFE & AFROBEAT CLASSICS 1967-1981" Strut STRUT147CD
[LP] Ogyatanaa "YEREFREFRE" Agoro AGL014 (1975)