いまどきパームワインを演奏する若いギタリストが、ガーナから登場するとは。
ヴィンテージ・パームワインの復刻CDを目下制作中の深沢美樹さんが、
フェイスブックで紹介されていた、チェチェクーなる若者のデビュー作。
ヴィンテージSPのリイシューCDが、楽しみで待ち遠しいんですけれど、
その前に新作パームワインが聞けるとは、前祝いでしょうか。嬉しいですねえ。
ハイライフをもじったタイトル『ハイアー・ライフ・オン・パームワイン』のウイットも効いていますね。
幼い頃、教会のオルガン奏者だったお父さんからオルガンを習っていたというチェチェクーは、
オルガンより、6・7歳の頃に偶然テレビで見たコー・ニモの“Gyamena Boo” が忘れられず、
ずっと心に残っていたんだそうです。
わずか30秒ほどのパームワインが、チェチェクーの運命の曲になったんですね。
それから15年後、大学で教鞭をとっていたコー・ニモとじっさいに会うことができ、
パームワイン・スタイルのギター、オドンソンを直々に習うばかりでなく、
アカンの伝統音楽やアシャンティの歴史を深く学んだのだそうです。
セルフ・プロデュースによる本デビュー作の1曲目で、
そのコー・ニモとデュエットしています。
ここでは、オーソドックスなパームワイン・スタイルに加えて、
ヴィシャル・ナガーのタブラをフィーチャーしたところがミソ。
伝統やルーツに即した若い世代の音楽家たちが、
さまざまなフェスで交流した外国のミュージシャンたちと共演して、
無理なく音楽性を広げていくところは、グローバルな時代の良さといえますね。
レパートリーはパームワインのほか、ハイライフ・ナンバーも多くあって、
全体のサウンドは、オーガニックなアフリカン・フォークといったムード。
ホーン・セクションを交えた曲でも、
チェチェクーの柔らかなアクースティック・ギターの響きが常に中心にあって、
爽やかなサウンドとなっています。
チェチェクーのギター・スタイルは多彩で、ツー・フィンガーのアフリカン・ギターは当然として、
ピカードをさりげなく披露したりと、フラメンコ・ギターも修得していることを伺わせます。
マヌーシュ・スタイルのフレージングも聞かせたりしているので、引き出しは多そう。
アルバム・ラストは、活動の拠点としているアクラのジャズ・クラブでのライヴ演奏で、
なんと、フェラ・クティの“Lady” をカヴァーしています。
ジャジーなアレンジで、洒落たムードに仕上げていて、
イメージをがらりと変えたこのカヴァー・ヴァージョンは、とても新鮮です。
Kyekyeku "HIGHER LIFE ON PALMWINE" no label no number (2016)