『ポルトガルのファド』とずばり名付けられたタイトルも神々しい、
アマリア・ロドリゲスの56年の名作が、50周年記念エディションとしてお目見えしました。
2枚組のディスク1には、オリジナル盤収録の12曲が初のモノラル・ヴァージョンでCD化され、
さらに本作のセッションで録音された別の既発曲10曲が収録されています。
ディスク2には、別テイクやテスト・テイクなどの未発表音源を収録していて、
スタジオ内での会話も含むテイクは、熱心なマニア向けといえますけれど、
アマリア・ファンなら必携でしょう。
今回のCD化は、アマリア・ロドリゲスのLP録音を行った
ヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョによるもので、まさに本家本元による復刻なんですが、
今回ちょっと驚いたのは、同時発売で“AMÁLIA NO OLYMPIA” が出ていたこと。
あれ? これは、フランス・オリジナル盤のジャケットを採用したリマスター盤が、
iPlay から出たばかりだよねえと思ったら、
もうあれから5年も経っているんですね。月日が流れのは速いなあ。
なんと、あのiPlay盤はすでに廃盤なんだそうで、
ヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョが出したのは、
英語(!)のタイトルを白地にレタリングしただけのシロモノ。
アマリアの歴史的名作にこのジャケット・デザインはないだろといった素っ気ないデザインで、
iPlay がオリジナルの風格あるステージ写真を再現していただけに、カチンときましたよ。
え、それじゃあ、もしかしてiPlay が復刻した歴史的傑作“COM QUE VOZ” の
デラックス・エデイション2枚組は?とチェックしてみたら、なんと、こちらも廃盤。
えぇ~、知らなかったぁ。
わずか5年程度で、あのスグレものの復刻CDが、市場から姿を消すとは。
アマリア・ロドリゲスほどの大物ですら、この扱いかよと、フンガイしてしまいました。
アマリア・ロドリゲス・ファンの皆様、
とりあえず、この“FADO PORTUGUÊS” の50周年記念エディション、即買いましょう。
どうせファースト・プレスのみで、すぐになくなってしまうのは必至でしょうから。
ついでに、ポルトガルの伝承曲を歌った3作を集大成した“AMÁLIA… CANTA PORTUGAL” と、
65年にイギリスのプロデューサーが録音した英語曲の新たな編集盤“SOMEDAY” も
同時発売されたので、興味のある方はこちらもあわせて入手をおすすめします。
オフィス・サンビーニャのウェブ・ショップのみで限定販売されています。
思い起こすと、アマリア・ロドリゲスのヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョ盤LPは、
80年代末にポルトガルEMIがずらっとCD化したんですよね。
まだ当時はCDが出始めの頃で、旧作のカタログも豊富ではなかった時代でしたが、
オリジナル・フォーマットでずらっとCD化されたのが壮観で、
さすが大物アマリア・ロドリゲスは違うと感心しつつ、
LPでは持っていなかったものもせっせと買ったことを思い出します。
ところが、これも数年後には廃盤となって入手困難になってしまい、
ポルトガル盤CDを買い逃した人の恨み節を、ずいぶんよく聞いたものでした。
その後も長い間オリジナルLPのフォーマットでCD化されることはなく、
いい加減な編集盤しかないという時代が、長いこと続いたんですよね。
ようやく05年頃になって、ソン・リブレが旧作カタログを再CD化し始め、
社名変更したiPlay が継続していたんですが、
それも実は、日本で配給していたオフィス・サンビーニャの田中勝則さんの
オファーで実現したものだったということを、
今回買ったCDに付いていた当時の日本語解説で知ってびっくり。そうだったんだぁ。
アマリア・ロドリゲスほどの歴史的歌手のCDですら、この始末。
レコード会社が所有する過去のカタログへの冷淡さは、
今に始まったことじゃないですけどね。
「いつまでもあると思うな親とレコード」。
大手のレーベルから出てるから、いつでも買えるなんて油断してたら、
あっという間になくなるぞっていう話であります。
Amália Rodriguez "FADO PORTUGUÊS" Edições Valentim De Carvalho SPA0354-2