マルタ・アシャガリの新作! おお、なんてひさしぶり。
この人の歌を聴くのは、96年のAIT盤“CHILD'S LOVE” 以来ですよ。
AIT盤のライナーには、これがマルタの6作目で、29歳と書かれていたので、
現在は49になるわけね。女性の年齢をわざわざ書くのは、失礼でありますが。
アルバムの少ない人で、これまで出たCDはこのAIT盤1枚だけのはず。
96年当時で6作目といっても、5作目まではカセットだったんじゃないかな。
アスター・アウェケ、ハメルマル・アバテ、クク・サブシベと並ぶ、ヴェテラン歌手であります。
トロントに暮らしていた時期もあったようですが、今は帰国してエチオピアで活躍しています。
今作がヴェテラン復活の作なのか、
歌ってはいたもののCDを出していなかっただけなのかは、
よくわからないんですが、歌いぶりにはブランクを感じさせません。
“CHILD'S LOVE” では、しゃくりあげ唱法ともいえる独特の歌いぶりが印象的でした。
線の細い声で、すすり泣くようなユニークな節回しを聞かせていました。
あれから20年、かつての線の細さはなくなり、声も太くなって味わい深くなりましたよ。
エチオピア伝統の音感と節回しを深く刻み込んだ歌いぶりは、
ヴェテランらしいこの世代の面目躍如といったところでしょうか。
エチオピア情歌のティジータをはじめ、エチオピア独特の五音音階をもとにした
楽曲が多く取り上げられているほか、ティグリーニャの曲も歌っていて、
エチオピアのフォークロアの香り豊かなレパートリーが並びます。
マシンコやクラールなどの伝統楽器に
アコーディオンやサックスを効果的にフィーチャーしたプロダクションも申し分なく、
円熟したマルタの歌声を盛り立てています。
Martha Ashagare "YEGUD MEWIDED" Flute no number (2015)
Martha Ashagari "CHILD’S LOVE" AIT AIT006 (1996)