かすかに苦味を加えた味のある声、なんか聞き覚えがあるなあと思って、
棚をごそごそと探したら、この人の04年作“CHEBEL LEBE” がありました。
少しクセのあるテナー・ヴォイスで、伸びのあるヴォーカルを聞かせる
エチオピアの男性シンガー、ゲテ・アンレイ。
キレのあるこぶし使いが巧みで、いい歌手だなあと思いつつ、
ナホンの凡庸な金太郎飴プロダクションが、その歌いぶりを生かせず、
なんとも残念に思っていたんでありました。
今度の新作も、ナホン専属のアレンジャー兼ギタリスト、エリアス・メルカの制作なんですが、
ちゃらい鍵盤系のチープなサウンドが影を潜め、
ボトムにも厚みが増して、ぐっと重心が低くなりましたね。
エリアスのロック調ギターや、ファンク・ベースのフィル・インを効果的に使い、
打ち込みのホーン・サウンドに生のサックスを絡ませるなどの工夫もして、
メリハリのあるプロダクションにしています。
曲中に複雑なリズムを織り交ぜるパートを作るなど、
以前には聞かれなかったアレンジを施すようになったほか、
鍵盤楽器によるオーケストレーションのアレンジも格段に向上しています。
なんかすっかり腕を上げましたねえ。エリアス・メルカ、見直しましたよ。
ゲテ・アンレイもカラフルなサウンドに応えて、
迷いのないパワフルなヴォーカルでシャープに歌っていて、胸をすきます。
ゲテは、10年にジャン=ポール・ブレリーのアディス・アベバ・セッションにも参加していましたね。
今まさに脂ののった、華のあるエチオピア演歌を歌える逸材です。
Gete Anley "MELKISH AYBELTISHIM" Ambassel no number (2015) [Ethiopia]
Gete Anley "MELKISH AYBELTISHIM" Nahom no number (2015) [US]