新たなる西アフリカ音源のリイシュー。これは、大労作ですねえ。
またしてもフローラン・マッツォレーニのお仕事ですよ。
フローランが今回手がけたのは、ブルキナ・ファソ。
サンカラ革命が起こる前の、まだ国名がオート・ヴォルタだった時代に、
オート・ヴォルタ第2の都市ボボ=ディウラッソで活躍したバンドの音源です。
CDまたはLP3枚組と写真集という仕様で、この写真集がスゴイ。
ボボ=ディウラッソの中心街にスタジオを構えていたという、
写真家ソリ・サンレによる70年代に撮影した貴重な写真111枚が、
ぎっしりと詰まっているんですが、時代の空気感を封じ込めた濃密さに、
頁をめくるたびにタメ息がもれました。
スタジオで撮られたポートレイトは、一人から二人、そしてグループと数が増えていきます。
続いて、ナイトクラブで踊る人々に、ライヴ演奏中のバンド・メンバーなど、
70年代当時のファッションや流行がヴィヴィッドに伝わってきて、
この時代のアフリカン・ポップスをこよなく愛するファンには、たまりませんね。
ぼくはCDを買ったので、ミニ写真集といった趣でしたけれど、
LPを買った人は大判の写真集で、迫力満点だったんじゃないのかな。
そして、3枚のディスクには、1枚目がヴォルタ・ジャズ、2枚目がダフラ・スタール、
3枚目がレ・アンバタブル・レオパール、エショ・デル・アフリカ、ウェドラオゴ・ユセフ、
イディ・オイドリッサが収録されています。
これまで、この時代のオート・ヴォルタの録音は、サヴァンナフォン、キンドレッド・スピリッツ、
アナログ・アフリカから編集盤が出ていて、ヴォルタ・ジャズやダフラ・スタールの録音も
1・2曲収録されていたものの、わずか数曲ではバンドの個性を捉えることができませんでした。
ヴォルタ・ジャズのシングル盤も2枚持ってはいたけれど、
これだけではよくわからなかったんですよね。
今回ディスク1とディスク2に、両者それぞれの録音がまるまる収録されたことで、
二つのバンドの音楽性がくっきりと見えるようになりました。
ギタリストのイドリッサ・コネがリーダーとなり、64年に結成されたヴォルタ・ジャズは、
セヌフォやマンディンゴなど自分たちの伝統音楽をモダン化するとともに、
ルンバ・コンゴレーズや、パチャンガなどのアフロ・キューバンに強く影響を受けたバンドでした。
63年にフランコ率いるO・K・ジャズが西アフリカをツアーしたのをきっかけに、
イドリッサ・コネがルンバに感化されたと、解説に書かれています。
一方、74年にヴォルタ・ジャズを脱退した歌手のテイジャニ・クリバリは、
自身のバンド、ダフラ・スタールを結成し、ヴォルタ・ジャズ時代のラテン色を取り払い、
同時代のギネアのバンドを彷彿させるマンデ・ポップを聞かせます。
ティジアリ・クリバニがマリ出身だったことに加え、
サリフ・ケイタ在籍時のレイル・バンド、シュペール・ビトン、シュペール・ジャタといった、
マリのトップ・バンドで活躍したマリ人ギタリストのズマナ・ジャラを擁し、
マンデ・サウンドの濃密な味わいを醸し出していますよ。
特に、初期の録音ではバラフォンをフィーチャーし、
ズマナ・ジャラのギターと引けを取らないソロを取っているんですね。
ミュート音でギター・フレーズを模したソロは、なかでも聴きものとなっていて、
ギターがバラフォンのフレーズを模すことはあっても、その逆というのは珍しい気がします。
後年の録音では、バラフォンがなくなり、オルガンに取って代わられますが、
初期の泥臭さのあるパンチの利いたマンデ・ポップは、ギネアのバンドにひけをとりません。
ヴォルタ・ジャズやダフラ・スタールに比べると、ディスク3収録のバンドは聴き劣りするものの、
写真集後半に掲載された、詳細なバイオグラフィと、レコード・ジャケットの写真、
ディスコグラフィは、貴重な資料といえますね。
最後に難をいえば、曲順ですね。
新旧録音をランダムに並べたのは、大減点もの。
特に、デイスク2のダフラ・スタールは、バラフォンをフィーチャーした初期録音と
オルガンをフィーチャーした後期録音とで、かなりサウンドが変化しているので、
それらが入り乱れて出てくる編集が、なんとも聞きづらいものとなっています。
ディスク3でも、2曲しか収録していないエショ・デル・アフリカの曲を、わざわざ離した曲順にして、
その間にもっと後年の音源を置くのも、まったくの意味不明。
大労作なだけに、このアトランダムな曲の並びだけが残念でしたね。
[CD Book] Volta Jazz, Coulibaly Tidiani et L’Authentique Orchestre Dafra Star, Les Imbattables Léopards, Echo Del Africa, Ouedraogo Youssef and Idy Oidrissa
"BOBO YÉYÉ : BELLE ÉPOQUE IN UPPER VOLTA " Numero NUM055