ソーサーダトンのCDを、在日ミャンマー人ショップで見つけて、かれこれ十数年。
伝統歌謡をみずみずしく歌う東南アジアの若手女性歌手といえば、
当時マレイシアのシティ・ヌールハリザがすでに有名でしたけれど、
そのシティに劣らぬ高い歌唱力と、バツグンの表現力に惚れ込み、
以来、ソーサーダトン、ソーサーダトンと、事あるごとに吹聴し続けてきました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-02-17
その甲斐あってか、日本のCDショップには売っていない
ミャンマー盤CDにもかかわらず、ディスク・ガイド『定盤1000』にも選ばれ、
応援団としては満足至極であります。
とはいえ、まだまだ一部の音楽ファンが知るのみのミャンマー音楽ですけれど、
昨年は日本人がミャンマーで現地録音したアルバムが登場するなど、
少しづつミャンマーの伝統音楽に触れる機会が増えてきた気がします。
そんな旬になりつつあるミャンマーの伝統音楽なんですが、
ソーサーダトンを初めて聴いた時の衝撃が蘇る、スゴイ新人が登場しました。
それがこの、メーテッタースウェ。まだ中学生という、13歳の少女です。
YouTube にはもっと幼い頃の映像もたくさん上がっていて、
大人顔負けの歌いぶりにビックリさせられます。
メーテッタースウェは7歳でデビューし、毎年恒例の全国伝統音楽コンクールで、
何度も金賞を受賞するという、早熟の天才少女歌手です。
13年1月12日、ヤンゴンの人民公園で開かれたマーマーエー
帰国初のソロ・コンサートにもゲストとして招かれ、歌っています。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-09-09
さらに今年4月には、ヤンゴンの国立劇場で行われた
科学技術省が後援する世界知的所有権の日記念イヴェントで、
ミャンマー伝統音楽への貢献を讃えた賞を授与されています。
この時はメーテッタースウェとともに、93歳の最古参の作曲家ボコレーティンアウンも
賞を授与され、老若男女のダブル受賞が話題となったそうです。
これはなんとしても、メーテッタースウェのCDを聴かなきゃねえ!
というわけで、日本の大学を卒業した元留学生で、現在は仕事でミャンマーと日本を
行き来しているミャンマーの知人に連絡をとり、CDを買ってきてもらったのでした。
彼が買ってきてくれたのは、今年1月にリリースされた
“SANDA KAINAYI NIN DUTIYA SHWE NINSI” と、
8月にリリースされたばかりの“KAUNG CHIN MINGALAR” の2枚。
“SANDA KAINAYI NIN DUTIYA SHWE NINSI” は、
伝統歌謡と西洋ポップス折衷スタイルのミャンマータンズィン。
いかにもミャンマーらしい健全歌謡調のポップ・ナンバーが多いんですけれど、
沖縄音階そのものの6曲目など、ものすごくユニークな曲も聞けます。
一方、“KAUNG CHIN MINGALAR” の方は、仏教歌謡と思われる本格的な古典歌謡。
伴奏がサイン・ワインではなく、サウン(竪琴)とフネー(チャルメラ)や
パルウェー(縦笛)を中心にした、小編成の室内楽サウンド。
サイン・ワインのにぎやかなサウンドではなく、音数の少ないこうした編成は、
歌い手にとってはゴマカシの効かないものといえますが、
古典歌謡独特のこぶしを鮮やかに駆使した、
とびっきりフレッシュな歌声はまばゆいばかりで、感動します。
これが13歳の歌声とは!
May Thet Htar Swe "SANDA KAINAYI NIN DUTIYA SHWE NINSI" Rai no number (2015)
May Thet Htar Swe "KAUNG CHIN MINGALAR" Rai no number (2015)