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平和を取り戻したアンゴラで再始動するキゾンバ ダニー・L、ドン・キカス

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Danny L  NAÇÃO ANGOLANA.jpg   Don Kikas  REGRESSO À BASE.jpg

四半世紀を越す長きに渡った内戦が02年にようやく終結し、
アンゴラに平和が戻ったことで、アンゴラのポップスも本格的に再始動したんですね。
10年以上の前の出来事を、何をいまさらなんですが、
いかんせん情報がまったく伝わってこなかったので、
ようやく今になり、それを実感させるCDを入手して、
あらためてキゾンバの復活を認識させられました。

入手したのは、ダニー・Lとドン・キカスという、二人のキゾンバ・シンガーの旧作。
ダニー・Lことダニエル・ド・ナシメントは、ルアンダ生まれでポルトガルへ渡ったシンガー。
05年にCDデビューし、故国への思いをストレートに示した
アルバム・タイトルの06年の本作が3作目。
その後11年にアンゴラへ帰国し、
現在は歌手のほか、俳優としても活躍しているそうです。

一方、アンゴラ中部西岸の町スンベで74年に生まれ、
ポルトガルのディスコから歌手のキャリアをスタートさせた
ドン・キカスの6作目“REGRESSO À BASE” は、
そのタイトルが意味するとおり、16年に及んだ移民生活を経て、
アンゴラへ帰国した自身の体験を歌ったアルバムとなっています。

2作とも共通するのは、バラエティ豊かな音楽性。
キゾンバは、もともとセンバにズークをミックスしたものですけれど、
90年代のキゾンバのようなエレクトロ過多なものとはなっていません。
ヒップホップを通過したセンスを下地としながらも、
クドゥロのようなドープさをまとわず、コンテンポラリーなポップ・センスで、
さまざまな音楽をミックスしているところに、妙味があります。

アコーディオンをフィーチャーしたセンバや、
アンゴラ音楽のアイデンティティであるディカンザ(ギロ)を配したメレンゲ、
さらには、ダニー・Lはザイコ・ランガ=ランガのゼケテ・ゼケテをやっていたり、
ドン・キカスはバングラ・ビートまでやっているのだから、その多彩さに驚かされます。

リズム・セクションはすべて人力だし、
ピアノやアクースティック・ギターを生かした生音使いも、好感が持てます。
ズークがオーガニックなサウンドに変化したように、
適度にスキマのある、ヌケのいいキゾンバが楽しめますよ。

そして、ズークとの一番の違いは、なんといってもメロディのセンス。
センバから受け継いだ泣きのメロディは、アンゴラらしさを象徴するもの。
哀愁味とロマンティックな味わいをたたえるメロディは、
アンゴラ人のメロウネスを表しているといえます。

Danny L "NAÇÃO ANGOLANA" Vidisco 11.80.8594 (2006)
Don Kikas "REGRESSO À BASE" AMG/Vidisco 11.80.9303 (2011)

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