トーンナンディのデビュー作と一緒にミャンマーから届いたのが、
11月に出たばかりのメーテッタースウェの新作『森の愛らしい花』。
うわーい、これはぼくにとって、最高のクリスマス・プレゼントです~♡
前作“APYOZIN” は、スライド・ギターやバンジョーをフィーチャーした、
ユニークなサウンドのポップ作でしたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-02-28
今作はバックを一新し、オープニングは、
タンズィンのカケラもないポップ・ロック・サウンドでスタートします。
人気ロック・シンガーのマナウとデュエットするキャッチーなナンバーで、
ヒット狙いなのか、これはこれですごくサマになっていますけれど、
メーテッタースウェほど伝統歌謡の天賦の才に恵まれた人が、
フツーのポップ・シンガーになっちゃうつもりなのかなあ。
なんて心配していたら、2曲目からは、ご安心。
メーテッタースウェなればこその、ミャンマー調ポップスにスイッチします。
バンジョー(たぶんサンプル)をフィーチャーした曲あり、
伝統楽器の笛や太鼓、サウンをカクシ味に使った曲あり、
ユーモラスな男性コーラスを配した曲ありで、
ミャンマーならではの唯一無比なポップスを聞かせてくれます。
前作は、シンセがサウンドを支配しすぎていて、うっとうしく感じましたが、
今作はそのあたりのバランスも、すっかり改善。
タンズィン調のメロディもポップなサウンドに無理なく溶け込み、
プロダクションもグンと向上したのを感じます。
そしてなにより、主役メーテッタースウェの歌い方が、吹っ切れましたね。
前作では、ポップなメロディに伝統歌謡の節回しをなじませるのに、
迷いを感じさせるところがありましたけれど、
今作ではのびのびと歌えているじゃないですか。歌いぶりにキレが増したのに加え、
声に落ち着きも出てきて、成長を感じさせますよ。
いやあ、なんだかマレイシアのシティ・ヌールハリザが登り坂だった
90年代末を、思い起こしちゃいますねえ。
シティ・ヌールハリザの名は、
マレイシアの伝統歌謡をリフレッシュメントした97年の“CINDAI” で、
広く知れ渡ったわけですけれど、その後、伝統歌謡とポップ作を交互に制作しながら、
00年代にグングン成長していったんですよね。
あの時のシティとメーテッタースウェが、ぼくにはダブってみえます。
シティの“CINDAI” がメーテッタースウェの“KAUNG CHIN MINGALAR” なら、
今回のポップ作は、シティの01年作“SAFA” に当たるように思えるんですよ。
シティ・ヌールハリザのファンだったら、この話通じると思うんですけれど、どうかなあ。
マレイ・ポップスとミャンマー・ポップスとでは、だいぶ違いがありますけれど、
世界を見渡しても、こんなに朗らかで健康なポップスは、
ミャンマーをおいてほかにありません。
毒のないポップスなんて、とお思いのムキもありましょうが、
カッティング・エッジなんて価値観とは、
正反対のポップスがここには存在するのですよ。
May Thet Htar Swe "TAW PAN KALAY" Rai no number (2017)