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情熱のピアニズム グレゴリー・プレヴァ

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20180119 Grégory Privat.jpg   20180119 Grégory Privat Trio.jpg

やっぱり観てみなきゃ、わからないもんです。
マルチニーク出身の若手ジャズ・ピアニスト、グレゴリー・プリヴァ。
1月19日、丸の内コットンクラブ一夜限りのショウ、セカンド・ステージ。
この人の音楽性が、ようやくわかった一夜でした。

当初、マラヴォワのピアニスト、ホセ・プリヴァの息子さんということで、
12年のデビュー作を大期待で聴いてみたわけなんですが、
正直、期待はずれでした。
グアドループのグウォカで演奏される、カという太鼓のパーカッショニストも加え、
クレオール・ジャズを演出するかのように装ってはいるんですが、
グレゴリーのピアノからは、ビギン、マズルカ、カドリーユといったクレオール音楽も、
ベル・エアー(べレ)やグウォカなどのアフロ・アンティーユ音楽も、
まーったく出てきません。

むしろ、この人のピアノ・タッチからは、
クラシックの素養がしっかり備わっていることが聴き取れ、
ミシェル・ペトルチアーニのようなジャズ・ピアニストだということがわかります。
じっさい、ジャズ・ピアノを志したのも、お父さんのレコード・コレクションから、
ミシェル・ペトルチアーニを探し当てたのがきっかけだったらしいし。

マルチニーク出身の若手ビギン・ジャズ・ピアニストなら、
エルヴェ・セルカルがいますけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09
グレゴリーはまったく資質の異なるピアニストであることは、耳のある人なら瞭然でしょう。
なので、「カリビアングルーヴが胸を打つクレオール・ジャズの新星」という
コットンクラブのコピーが、まったくの的外れというか、ミス・リードだったので、
さて、どんなステージになるのやらと思っていました。

ステージは、最新作に収録されていた“Riddim” からスタート。
ダンスホール・レゲエを採り入れた曲だとご本人は語っていましたが、
ドラマーの4拍目のスネアのアクセントに、多少そのフシがあるくらいで、
レゲエとは似ても似つかぬもの。タイトル名だけ、カリビアン・ジャズを名乗るための
アリバイ作りしてんのかなという感じで、ちょっと鼻白んでいたりもしたんですが、
ライヴではだいぶ様相が違いましたよ。

演奏の始まりこそ、静謐なクラシカルなタッチで始まるんですが、
それ以降の展開がすごい。
徐々に熱を帯びていって、メロディをハーモニーの中に沈み込ませていったり、
反対にハーモニーからメロディを浮き立たせたりと、
さまざまに場面を変化させていきながら、
やがて両手で生み出す分厚いハーモニーが、音の壁のように積み上がっていって、
リズムの塊になって押し寄せてくるんです。気付いた時は、手に汗握る興奮に包まれ、
始まりの静謐な雰囲気など、どこかへ行ってしまったかのような高揚感に包まれます。

それがある局面を迎えると、ばあーっと音の壁が崩壊して、
また静謐で美しいタッチに戻るんですね。
このドラマティックな展開には、ちょっと驚かされました。
とにかく1曲の演奏が長いんです。どの曲も20分ぐらいやっていたんじゃないかな。

CDでは、上手いけど小粒なピアニストだなあ、なんて感想も持っていたんですが、
ライヴのエネルギーは、CDにはぜんぜん捉えられていませんね。
ステージは、エスビョルン・スヴェンソンに近いものを感じさせましたよ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-26

デビュー作で女性が担っていたヴォイスを、
ライヴではグレゴリーがピアノを弾きながらハミングしていて、
ミナス的な色合いを付け加えていくところなどは、イマドキのジャズらしさもあり。
ダイナミックな展開にぐいぐい引きこんでいく、情熱のピアニズム。鮮やかでした。

Grégory Privat "KI KOTÉ" Gaya Music Production GPGCD001 (2012)
Grégory Privat Trio "FAMILY TREE" ACT ACT9834-2 (2016)

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