ネッサネット・メレセの新作、聴けば聴くほどイイですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-01-06
年末年始、絶賛ヘヴィロテ中、まだまだ続きそうです。
年末に2017年のベスト10を選び終えてから聴いたもので、
もう1枚も替えたくなかったから、ブログの記事を年始に後送りして、
2018年のベストに入れようという、セコいまねもしたりして。
グリグリこぶしを回す、ネッサネットのエチオ演歌ぶりも痛快ですけれど、
なんといっても嬉しいのは、生演奏という点。
やっぱ人力演奏は、打ち込み代用では出せないグルーヴがありますよ。
そんな快感を味わえるアルバムがまたひとつ、届きました。
ミカヤ・ベハイルという女性歌手の新作。
見覚えのある顔だなと思って、棚をごそごそ探したら、
ありましたね、07年のデビュー作が。
正直デビュー作はあまり印象に残っていなかったんですけれど、
本作での生音グルーヴにのる、ハイ・トーンとファルセットには、
グッときてしまいました。
あれえ、こんないい歌手だったっけ。
あらためてデビュー作を聴き直してみると、チープな打ち込みとショボいミックスのせいで、
ミカヤの個性的な歌声が生かされず、残念な仕上がりとなっていました。
この人の最大の魅力は、独特のハイ・トーンのシャウト。
パワフルにシャウトしているのに、ふんわりとした軽い声のせいで、
押しつけがましさがなく、シャウトしていることじたいを意識させません。
ファルセットも柔らかでふくよかなところが、とても魅力的です。
充実したプロダクションは、一聴して、ネッサネットの新作同様の生演奏と
思い込んだんですが、よくよく聞けば、打ち込みもありますね。
とはいえ、生のドラミングを模したデリケイトな使い方なので、チープ感はありません。
デビュー作は、コンテンポラリー・ポップな曲ばかりでしたけれど、
本作には、情感溢れるスローのエチオ歌謡ティジータあり、
マシンコやケベロをフィーチャーしたアムハラ民謡調もあり、
その一方、オルガン、ピアノ、サックスをフィーチャーしたジャジーなトラックに、
ポップなダンス・トラックやレゲエとカラフルなレパートリーを楽しめます。
本作はデビュー作以来のアルバムとなりますが、
なんとミカヤは、慢性の自己免疫疾患によって、
13年のクリスマス・イヴに亡くなるという、突然の悲劇に見舞われていたのでした。
まだ30代半ば、娘さんが一人いるとのことで、なんとも痛ましく言葉を失います。
ミカヤの死後、未完成のままとなっている録音の存在がテレビ番組で明かされると、
ファンから多くの反響が巻き起こり、あらためて多くのプロデューサーから録音が集められ、
最終的にシカゴでミックスして、本作が完成したといいます。
バラエティ豊かなレパートリーやプロダクションに違いがあるのは、このためのようで、
ミックスのクオリティも、デビュー作とは段違いの仕上がりとなりました。
若くして亡くなった才能あるシンガーにふさわしい、丁寧な制作の傑作です。
Mikaya Behailu "GIZE BINEGUDIM" Vocal no number (2017)
Mikaya Behailu "SHEMAMETEW" Nahom NR2257 (2007)