ひさしぶりに聴く、越境ヴェトナム人歌手の新作です。
というと、お、ニュ・クイン!なんて思われる方もいるでしょうが、
残念ながらそうじゃないんだな。
フーン・トゥイ、4年ぶりのアルバムです。
みんなが待ち焦がれるニュ・クインの新作の方は、
ちっとも出る気配がありません。
ステージ・シンガーに収まってしまったみたいで、残念すぎます。
フーン・トゥイの方も、13年の前作から久しぶりのリリースで、
これが6作目となります。この人を知ったのは、だいぶあとになってからで、
作品をさかのぼって聴きましたが、2作目にあたる06年作がダントツでしたね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21
フーン・トゥイは現在43歳と、いままさに旬といえる、
脂の乗り切った歌声を聞かせてくれます。
明快なディクションに、メリハリの利いた歌い回し、
キレ味抜群の歌いっぷりは、天下一品です。
カイルオンの味わいを伝える、南部らしい雰囲気を持った歌謡歌手ですが、
本作ではカイルオンのレパートリーはないものの、
本格的なヴォンコやタンコを歌ってきたキャリアに裏打ちされた節回し、
とりわけ、こぶし使いの技巧には、思わずため息がこぼれます。
ダン・バウ(1弦琴)やダン・チャン(箏)、ダン・ニー(胡弓)などの
伝統楽器も効果的に配したプロダクションは、
まさに大衆歌謡路線ど真ん中でしょう。
4曲目でフィーチャーされる濁った音色のギター・フィムロンなんて、
おおっと、身を乗り出しちゃいましたからね。
ここのところヴェトナム本国の歌手による、
上品な戦前抒情歌謡のボレーロばかり聴いていたせいか、
ぐっとくだけた大衆味あふれる演歌調レパートリーが、新鮮に聞こえます。
Hương Thủy "DÒNG ĐỜI" Thúy Nga no number (2017)