不思議なムードを持ったアルバムですね。
バーレーン生まれ、イギリスで音楽教育を受けて、
ロンドンで活動中という、女性トランペッターのセカンド作。
アラビックなクォーター・トーンを奏で、妖艶なエキゾティズムをふりまく、
経歴そのまんまのアラビック・ジャズを聞かせます。
バス・クラリネットやヴィブラフォンの起用が効果を上げていますね。
ジャズというには、ときおりムード・ミュージックみたいに聞こえてしまうのは、
アラブを強調した音づくりが、オリエンタリズム臭を漂わせているから。
アラビア語の朗読を交えたり、スピリチュアルなアラブ・ムードを醸し出す演出が、
どうもウサン臭く感じるのは、ぼくだけ?
たとえば、アラブのパーカッション、ダルブッカやレクのプレイにも、
それが表われていますね。ビートが利いてなくて、
効果音的なプレイに終始しているところなんて、
このパーカッショニスト、アラブ人じゃないのは、バレバレ。
アラブ人の出自が自然ににじみ出るとか、
ルーツを掘り下げるとかいった音楽では毛頭なくて、
まるで作り物ぽい、西側リスナーのウケを狙った演出が感じられます。
まあ、こういう
というより、フェイクとは気付かずにカッコいいと思っているんだろうけれど。
その演出がわかる者には抵抗もおぼえる、ビミョーなアルバムであります。
魅力的なんだけれども、ね。
一番の聴きどころは、スピード感のある“Bloom” かな。
このトラックだけ、やたらとカッコよく、抜きんでた仕上がりと思ったら、
なんと、レディオヘッドのカヴァーだそう。
レディオヘッドのオリジナル・ヴァージョンの方にも、ヤズが参加しているのだとか。
アラブ・ムードな曲より、こういうロックの方が、ぼくは好感がもてます。
厚手の紙で作られた見開きのカード・スリーヴ式ジャケットは、
艶消しのコーティングを施した贅沢な作りで、アートワークもステキ。
28ページもあるブックレットといい、フィジカル愛が炸裂しています。
Yazz Ahmed "LA SABOTEUSE" Naim NAIMCD340 (2017)