また一人、ヒップホップからセンバに転向したアンゴラの若手を見つけました。
その人の名は、エディ・トゥッサ。
前に書いたプート・ポルトゲース同じセンバ新世代で、
10年にデビュー作を、12年にセカンドをリリースしたところも二人は一緒で、
良きライヴァル関係にあるといえそうですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23
エディは93年に結成したワレント・Bというラップ・グループでシンガーを務めていて、
YouTubeで見ると、クドゥロではなく、フツーのヒップホップをやっていたようです。
ソロ転向後の第1作では、ヒップホップのヒの字もない、生音主体のセンバをやっていて、
吹き抜けるアコーディオンの響きや、ディカンザが刻む快活なリズムが耳残りする、
ヌケのよいサウンドが快感です。
ルンバ・コンゴレーズの影響を受けたエレクトリック・ギターの音色もまろやかで、
エッジの立った音がいっさい出てこない、ふくよかなこのサウンドを、
二十代の若者が作り出しているんだから嬉しくなります。
グラン・カレ時代のルンバを思わずトラックや、77年の虐殺で命を落とした伝説のシンガー、
ダヴィッド・ゼーのカヴァーで聞かせる奔放な歌い口は、アルバムのハイライトといえます。
カヴァキーニョがリズムを刻み、クラリネットがソロを取るセンチメンタルなモルナも歌っていて、
すっかりトリコになってしまいました。
さらにセカンドでは、キューバのソンをミックスしたセンバにも挑戦。
トレスをフィーチャーし、ソンのリズムを取り入れながら、オルガンをカクシ味にして
ルンバ調のギターを絡ませるというサウンドが実にこなれていて、感服しました。
さらに、ホーン・セクションをフィーチャーしたサルサ・トラックまであるんですが、
これが途中から、するりとコンパのリズムにスイッチするという趣向となっていて、
ミジコペイばりのカッコよさに、もう降参です。
さらに、なんか聞き覚えのあるメロディが始まったと思ったら、
マルチーニョ・ダ・ヴィラがアフロ回帰した傑作サンバの77年作“PRESENTE” に収録されていた、
ボンガ作曲の“Muadiakime” をカヴァーしてるじゃありませんか。
♪ウェレ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ・レ、ア~ァ♪ というハミングに、
もう懐かしさイッパイとなってしまいました。
ヒップホップで育った世代が、こんなに芳醇なサウンドを生み出すなんて。
少し土臭さのある歌い口も、イマドキすごい貴重じゃないですかねえ。
半世紀前のアフリカ音楽が持っていた、まろやかな質感を取り返したアンゴラの若手たちに、
祝杯を上げたくなりますよ。
それにしても、これほど活況を呈しているアンゴラ音楽がまったく流通していないなんて、
なんたることですか。ディストリビューターの皆様方の奮起を、ぜひお願いしたいですね。
Eddy Tussa "IZENU MU TALE" LS Produções no number (2010)
Eddy Tussa "GRANDES MUNDOS" LS & Republicano ETCD02 (2012)