バロジの新作にヤられたのが呼び水になったのか、
立て続けにヒップホップの面白いアルバムに出くわしています。
それもインドネシア、ブラジル、アラブという、
これまであまりなじみない土地のヒップホップばかりなんですが、
なかでもウナったのが、このパレスチナとスイスの混成ユニット。
パレスチナ人ラッパー3人と、スイス人女性歌手に、
スイス人ジャズ・ミュージシャン6人によるユニットで、
生演奏によるジャジー・ヒップホップ。
いわば、「アラビック・ヒップホップ・ミーツ・ジャズ」であります。
これがもう、カッコいいのなんのって。超絶クールなアルバムです。
のっけの十数秒を聴いただけで、名盤と確信しましたね。
8年も前に出ていたCDなんですが、知りませんでしたねえ。
おそらく日本に入ってきたことないんじゃないかなあ。
仕掛け人は、スイス人ピアニストのクリスチャン・アントニウス・ミューラー。
プロデュースも、ミューラーがやっています。
どういう人かと調べてみたら、プログレからジャズ、クラシックまで幅広く演奏し、
作曲家・編曲家としても活躍する人のようですね。
カヤーンは本デビュー作以降、アルバムは出していないようで、
このアルバム限りのプロジェクトだったのかもしれません。
ユニット名は、アラビア語で「実存」「存在」を意味し、
イスラエル占領下の社会状況に対するパレスチナの若者の意見を、
ラップを通して表明しています。
ガザの悲劇的な状況にも触れているものの、怒りにまかせたラップではなく、
冷静に語りかけ、説得するような感情を抑えたフロウを聞かせます。
洗練されたサウンドは実にスタイリッシュで、
メロウネス溢れるジャジー・ヒップホップは、
ポリティカルなメッセージをクールに伝えたいという、彼らの意志の表れなのでしょう。
Kayaan "WEDNESDAY" Finalbrain NB0183 (2010)