ジェフ&マリアの名作2枚が、ようやくアメリカ本国でCD化されました。
“POTERY PIE” はオリジナル・リリースから半世紀(!)、
“SWEET POTATOES” にいたっては、今回がアメリカでの初CD化です。
“POTERY PIE” は、かつてハンニバルがCD化しましたけれど、
緑がかったヘンな色合いのジャケットになっていたのが残念だったので、
今回オリジナルどおりのアートワークとなったのが、嬉しいですね。
高校2年の時、マリア・マルダーの「真夜中のオアシス」をラジオで聴いて、
73年のデビュー作“MALIA MALDAUR” を買いに走ったのを皮切りに、
さかのぼってジェフ&マリアを聴いて、
すっかり彼らが生み出すグッド・オールド・ミュージックのトリコになったんでした。
ボビー・チャールズ、ベター・デイズ、エリック・フォン・シュミット、ジョン・サイモン、
ハングリー・チャック、エリック・ジャスティン・カズ、ボニー・レイットなどなど、
ベアズヴィル・スタジオが生み出す
ウッドストック・サウンドに魅せられる発端となったのは、
ジェフ&マリアのこの2枚がきっかけだったことは、間違いありません。
この2枚の面白さは、オールド・ジャズやヒルビリー、ブルースなど、
さまざまなアメリカン・ルーツ・ミュージックのエッセンスがいったん解体されて、
それを再構築するなかで、さまざまな化学反応を起こしていたことにありました。
その試みは、まさに現代のアメリカーナの先駆けでしたよね。
サン・ハウスの“Death Letter Blues” や
スキップ・ジェイムズの“Hard Time Killin' Floor” も、
高二にしてすでに原曲を知っているという、
ナマイキなブルース・マニアの早熟少年のぼくにも、
原曲にはない手触りをもっていることに、驚かされました。
マリアがか細い声で歌う“Georigia On My Mind” の解釈も超個性的だったし、
“Lazybones” でのジェフ・マルダーと
エイモス・ギャレットのコミカルなやりとりなんて、
ちょうど当時、憂歌団の木村充揮と内田勘太郎が
ライヴで披露していた掛け合いにシンクロするようで、楽しかったなあ。
ハリウッド・サウンド仕立ての“Brazil” も、
ブラジル人による「ブラジルの水彩画」にはない、エキゾ感覚が妙味でした。
エイモス・ギャレットの星屑ギターやチキン・ピッキン・スタイルも、
リマスターされたクリアなサウンドで、
弦にあたるピッキングのニュアンスまで伝わってきます。
マジカルなウッドストック・サウンドは、まったく色褪せることなく
アメリカーナが評価されるいまだからこそ、CD化の意義があろうというものでしょう。
Geoff & Maria "POTTERY PIE" Omnivore Recordings OVCD241 (1968)
Geoff & Maria "SWEET POTATOES" Omnivore Recordings OVCD242 (1972)