すごいアルバム作っちゃったな、cero。
シティ・ポップとして括られているのに違和感を持ちつつも、
彼らが生み出すサウンドは、ずっと気になっていました。
ネオ・ソウル~ヒップホップ~ジャズを参照しまくった
前作の『Obscure Ride』は、かなり前のめりになったもんです。
そして、今作。
豊かなハーモニーに独創的なコード展開という音楽性を深めるばかりでなく、
リズムの解釈、グルーヴの獲得が、とんでもない領域に達しちゃってますよ。
クラブ世代のビート感覚を根っこに持ちながら、
ヒップホップのリズムを人力に置き換えた、
現代ジャズのゆらぎ感を咀嚼するだけでなく、
さまざまなクロス・ビートが顔を出し、ラテンやアフリカ音楽を学んだ痕跡もくっきり。
多層的に音楽を取り込みながら、それをミクスチャーするのではなく、
それぞれの層をくっきりと露出させているところが、すごく魅力的なんだな。
このリズム、このサウンド、いったいどこから参照してきたんだろうと思わせながら、
そうした多様な要素を、整理したり、まとめたりするのではなく、
ばぁーっと放り出して、ライヴ演奏したようなエネルギーを感じさせるところが、
すごい魅力的なんです。スタジオ・ワークだけで作ったら、こうなりませんよねえ。
ceroのサウンドに惹きつけられているぼくは、
インスト・ヴァージョンのボーナスCDが付いた初回限定盤を買いました。
個人的には、文学的な歌詞がカンベンてなところもあるので、
インスト・ヴァージョンの方が、テイストに合います。
とはいえ、全部が全部インストの方が良いわけではなく、
演奏だけだと物足りなく聞こえる曲もあり、
声の響きがサウンドの一翼を担っている証拠ですね。
今作の白眉は、
ムーンチャイルドとアフロビートを溶け合わせたような「魚の骨 鳥の羽根」。
そしてラストのタイトル・トラックのハウス・ビートに、
サンバのパンデイロが絡んでくるところで、
やもたまらず立ち上がって、踊り出してしまいます。
cero 「POLY LIFE MULTI SOUL」 カクバリズム DDCK9009 (2018)