すごいリズム感の持ち主ですね。
フランス語でこんなにキレッキレのディクションで歌える人って、
ブロッサム・ディアリー以来じゃないかしらん。
ソフトに歌っても、リズムのキレがあるところに、高い才能が示されています。
びっくりさせられた主は、フランスから登場した、
新進ジャズ・ヴォーカリストのカミーユ・ベルトー。
おととしサニーサイドから出したアルバムが、
すでに一部で話題になっていた人だそうですが、ぼくは本作で初めて知りました。
サニーサイド盤ではスキャット・ヴォーカルが話題になったとのことで、
本作でもスキャットやヴォーカリーズを華麗にキめていますが、
そうした派手なパフォーマンスを可能としている、
この人のリズム感とディクションの確かさの方に、注目したいんですよね。
本作は、自作曲に加えて
ジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、ビル・エバンスのジャズに、
ラヴェルやバッハのクラシック曲、セルジュ・ゲンズブール、ジョルジュ・ブラッサンス、
ブリジット・フォンテーヌのフランス語曲を取り上げています。
レパートリーによって、ディクションを使い分けているところは、
言葉の響きに自覚的な人ですね。大胆にして繊細な発声の表現力に感じ入りました。
タイトル曲は、
コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」のヴォーカリーズ・ヴァージョン。
その鮮やかな料理ぶりを聴いていて、思わずカミーユに、早口ショーロ・ヴォーカルの
アデミルジ・フォンセカを聞かせてみたい、なんて思っちゃいました。
ぜったい興味を持って、チャレンジしてくれそうな気がします。
Camille Bertault "PAS DE GÉANT" Okeh/Sony Music 88985422332 (2018)