ユッスー・ンドゥールがシーンにカムバックし、
ヴェテランから中堅、若手と入り乱れて、
シーンが活気づいている様子の伝わる、セネガルのンバラ。
あいかわらずCDの流通が悪くて、入手するのが難儀なんですけれど、
少しだけ近作が届きました。
今回のハイライトは、今年出たパペ・ジュウフの5作目となる新作。
これまで見えにくかったこの人の個性が、本作ではしっかりと発揮されましたね。
パペ・ジュウフは、78年ダカールの出身。
セネガル南西部シヌ=サルーム・デルタにオリジンがある家系の、
ウォロフ人グリオの家庭に生まれました。
幼い頃から冠婚葬祭の場で歌い、本格的な芸能界入りをしたのは、
95年にレンゾ・ジャモノへ参加した時で、その後98年にソロ・デビューしました。
パペのアルバムは、手元に11年作“CASSE CASSE” と
14年作“RÀKKAAJU” の2枚があります。
声はいいし、グリオ出身らしい鍛えられたノドも悪くないんですけど
どうもユッスーに似すぎていて、小粒なユッスーという感が否めなかったんですよね。
声じたいが似ているうえに、ハイ・トーンで声を張るところなどは、
もろにユッスーといった感じでした。
今作でも、ユッスーの影響大な歌いぶりは変わっていないものの、
緩急のつけかたに進歩の跡がうかがわれ、
ユッス・フォロワーを脱したパペ自身の個性がアピールされています。
バックは、14年作の“RÀKKAAJU” のメンバーと大きくは変わっていませんが、
ソロ・ギターのクレジットがラミン・フェイ1人から、他の5人に増えたのが注目されます。
曲によってトーンの異なるギターが聞こえてくるのはそのせいで、
なかでも、5曲目のシャープなギター・ソロが一番の聴きもの。
これを弾いているギタリストの名前を、知りたいところです。
リズム・セクションとサバールやタマなどのパーカッションが
一斉に突っ込んできたり、全員がリフをキメる場面など、
小気味よいンバラのサウンドが全編で炸裂していて、胸をすきます。
アルバムの構成も、冒頭スローで始まり、徐々にエンジンを上げていって、
終盤に向け、ビートがどんどん早くなっていく展開も、ドキドキさせられますね。
ちなみに、昨年パペ・ジュウフは、ユッスー・ンドゥールが毎年パリで開く
一大コンサート、グラン・バルにゲストで招かれ、
ファリー・イプパの次に登場し、ユッスーと“Na Woor” を歌ったんだそうです。
Pape Diouf "ENJOY" Prince Arts no number (2018)