7月にジプシー・シーサコーンを取り上げましたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-07-09
またも女性歌手によるレーの新作が届きました。
タイでもマイナーな仏教歌謡レーの新作が続くなんて、珍しいですね。
今回は、中堅どころの実力派モーラム/ルークトゥン歌手のジョムクワン・カンヤー。
デビュー当初はグラミーに所属していたようですけれど、
その後ノッポンやいろいろなレーベルから作品を出しています。
歌唱力バツグンな人ので、その実力を示す意味でも、レーはうってつけですね。
ジプシー・シーサコーンの新作はルークトゥン色の強いサウンドで、
デビュー作のようなレーらしさが味わえませんでしたけれど、
ジョムクワンの新作のサウンドは、ルークトゥンに寄りすぎず、
かといってオーセンティックなレーの単調さに陥ることもなく、
歌謡性と宗教色のバランスがとれたアルバムに仕上がっています。
ポップ・モーラム調のオープニングこそ、ひと昔前のシンセ使いというセンスの古さに
がっくりきましたけれど、2曲目以降はがらりと様子が変わります。
オルガンとサックスをフィーチャーし、寄せては返す波のような
ゆったりとしたリズムにのせて、レーお約束の「ふんが、ふんが」フレーズも交えつつ、
見事なこぶし回しでレーを歌っています。
さらに、ラナート(木琴)、クルイ(縦笛)、チン(小シンバル)といった
伝統楽器のみの伴奏で歌う曲あり、ピーパート編成に
サックスやミュート・トランペットが加わる曲あり、
タポーン(両面太鼓)とトランペットをフィーチャーする曲あり、
ホーン・セクションが活躍する曲ありと、
全12曲すべて異なるプロダクションで楽しませてくれるのだから嬉しくなります。
ジョムクワンも伴奏により節回しを変えながら歌っていて、
伝統的な唱法から叙情味溢れるスローなルークトゥンまで、幅広い表現を披露していて、
そのあでやかな歌いっぷりには、思わずため息がこぼれます。
また、このアルバムには、全曲のヴィデオが収録されたVCDも付いているんですが、
黄衣をまとった僧侶や、仏教寺院の僧堂や本堂の色彩豊かな壁画などのほか、
出家の儀式らしき断髪のシーンなども登場します。
ほかにも、ドラマ仕立ての内容で、出産にまつわるシーンがいくつか出てきたり、
赤ん坊の育児をテーマにしているのは、仏教とどういう関係があるんだろう。
意味不明のシーンも多いんですが、仏教がタイの日常生活に深く根付いていることだけは、
よく伝わってきますね。
さらに、一番注目されるのは、ブラスバンドが街をパレードするシーンで、
まるでマルディ・グラみたいじゃないですか。
街の人たちも普段着のまま、タイ独特の手をくねらせる踊りを舞いながら、
楽しそうに練り歩いていきます。
知識の乏しさゆえ興味尽きぬレーの奥深き世界が、垣間見れます。
[CD+VCD] Jomkwan Kulya "JOMKWAN NGARN BUAD" LT Promotion no number (2015)