わーい、またセネガルのウォント・リストから1枚、買い付けてもらえましたよ。
ここ数年セネガル盤がネット・ショップで買えなくなって、
手元のウォント・リストがどんどん溜まる一方だったんですけれど、
今年の春、とあるフランス在住の日本人女性が買い付けてくださって、
十数枚近く手に入れることができたんでした。
リストの残りは、引き続きエル・スールの原田さんに探索をお願いしていたんですが、
今回入手できたのは、ンバラの新人女性歌手アイダ・サンブのデビュー作です。
アイダ・サンブは、88年に名門ガウロの家系に生まれた、まだ二十代半ばの若手有望株。
「ガウロ」とは、フラニ系のトゥクロール人のグリオを指します。
セネガルの人間国宝の名グリオ、サンバ・ジャバレ・サンブのお孫さんなんですね。
06年にユネスコのリヴィング・ヒューマン・トレジャー(人間文化財)にも認定された
偉大な祖父を持つアイダは、生まれながら持つ才能を幼い頃から発揮し、
わずか8歳で学校の劇団合唱隊の指揮者となったというエピソードが伝えられています。
16歳でユッスー・ンドゥールのレーベル、ジョロリと4年契約を結び、
この間にユッスーはじめ、バーバ・マール、キネ・ラム、
パペ・ジョウフ、アブ・チュバロほかそうそうたるスターたちとともに共演し、
グラミーで絶賛されたイギリスのドキュメンタリー映画“1 Giant Leap” にも起用されました。
華々しい活躍を経て、12年に満を持して出したデビュー作は、
期待にたがわぬ内容となっています。
複雑なブレイクをキメまくるサバールを中心としたパーカッション・アンサンブルと、
弦楽器のハラムを効果的に交えた生音中心のサウンドにのせて、
ハツラツと歌う生一本の喉がまばゆいですねえ。
力まかせに歌い過ぎているキライがなくはないですけれど、
デビュー作なんだもん、いいじゃないですか。
円熟するのは、まだまだこれから。楽しみですねえ。
12年コラ・アワードの女性伝統音楽家部門を受賞した本デビュー作は、
祖父サンバ・ジャバレ・サンブに捧げられたアルバムでした。
タイトルにもなっている“SARABAA” は、サンバの69年の代表曲です。
サンバのソロ・アルバムはカセットしかなく、セネガル国外ではまったく知られていませんが、
09年にフランスでドキュメンタリーが制作されていて、DVD化されています。
そういえば、ユッスー・ンドゥールの最新作のミニ・アルバム“FÀTTELIKU” でも、
サンバ・ジャバレ・サンブの“Kontaan Naa Xaleyi” が冒頭で歌われていましたね。
あのミニ・アルバムは、サンバのほか、ラロ・ケバ・ドラメ、ンジャガ・ンバイという、
セネガルを代表する3人の名グリオの曲とウォロフ民謡1曲を歌った、
伝統レパートリーのアルバムとなっていました。
話があちこちに飛んじゃいましたけど、
サンバ・ジャバレ・サンブも、孫の活躍には目を細めていることでしょう。
Aida Samb "SARABAA" Prince Arts no number (2012)
Youssou Ndour "FÀTTELIKU" no label no number (2015)